研究実績の概要 |
当初の研究計画では、Sugama-Hortonモデルに対して研究を進める予定であったが、Sugama-Hortonモデルの導出元になった簡約化MHD方程式と近い構造をしたモデルに対して研究を行った。
プラズマ中に生じるテアリング不安定性と磁力線の繋ぎ変えを再現した簡約化電磁流体力学(MHD)方程式を研究対象として研究を行った。テアリング不安定性によって生じた磁気島のサイズや個数がパラメーターに依存して変化することを明らかにした論文(M.Ottaviani, et al., Phys.Rev.Lett. 93(2004) 075001. など)で用いられているモデルに対して、擬スペクトル法を用いた数値シミュレーションを行うプログラムをFortranで作成した。擬スペクトル法は、空間方向に対する高速フーリエ変換を偏微分方程式の解法に用いるものである。近年、せん断流れがプラズマの不安定性に及ぼす効果が核融合プラズマの分野で研究されている(市口, 他, J. Plasma Fusion Res. 96(2020) 579-587)。そこで、せん断流れの大きさによって、渦度スペクトルの時間発展の様子がどのように変化するのかを数値シミュレーションを用いて調べることにした。数値シミュレーションを行うときには、せん断流れを考慮した境界条件を用いた。通常の圧縮性MHD方程式はオームの法則が用いられているため、磁場の方程式に密度勾配が現れないが、本研究で考えるMHD方程式は一般化オームの法則が用いられているため、磁気ポテンシャルの式に密度勾配の項が現れるという違いがある。そのため、密度の不均一性によって生じる交換型不安定性を調べるのにも適している。せん断流れがある場合を2次元の長方形領域で考える場合には、周期境界条件と異なる境界条件を課す必要があるが、そのような問題設定の下で解の存在証明を与えて論文にまとめて投稿する予定である。
|