研究課題/領域番号 |
20K03748
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石井 克幸 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40232227)
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研究分担者 |
高坂 良史 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (00360967)
上田 好寛 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (50534856)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 平均曲率流 / Willmore 流 / 閾値型アルゴリズム / 正則性 / 特異性 |
研究実績の概要 |
代表者の石井は平均曲率流に対する閾値型アルゴリズムについて研究した。閾値型アルゴリズムに用いる近似方程式は元の平均曲率流から自然な形で得られることがわかり、このアルゴリズムは平均曲率流の近似として正当なものであることが分かった。空間曲線に対する曲率流への閾値型アルゴリズムについて研究した。熱方程式の解に対する漸近挙動を調べることによって熱方程式の解に曲率流方程式が内蔵されていることが分かった。また、この解に対する先験評価も得られており、これらを用いて閾値型アルゴリズムの収束について研究を進めている。更に Willmore 流への閾値型アルゴリズムの応用について研究した。高坂、三宅 (京都大学) との討論を基に 4 階熱方程式の解に対する形式的漸近展開を計算することによって Willmore 流の近似を与えることと閾値をどのように定義すればよいかが分かった。これらを基に収束の証明に取り組んでいる。 分担者の高坂は接触角境界条件のもとでの表面拡散方程式に対する進行波解の安定性について研究した。安定性を調べるために非線形 4 階放物型偏微分方程式の境界値問題として表される接触角境界条件付きの表面拡散方程式を進行波解のまわりで線形化し、対応する固有値問題の解析を行った。その結果、変数係数 3 階線型非斉次常微分方程式を解析することが本質的であることが分かった。 分担者の上田は気体力学や弾性体力学に起因する対称双曲型方程式系や双曲--放物型方程式系に関する安定性を研究した。特に方程式の持つ消散構造や各項が複雑に影響し合うことによって生じる『可微分性の損失』について解析を行っており、平衡点まわりの線形化安定性に関して研究を進めた。方程式系の係数行列にある条件を仮定することで安定性と解の減衰評価を導くことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ禍のため、勤務先の業務、特に講義資料の準備に多くの時間を取らざるを得ない状況であった。空間曲線からなる曲率流に対する閾値型アルゴリズムについては熱方程式の解に対して得られた先験評価を用いた極限の計算が思うように進まなかった。Willmore 流に対する閾値型アルゴリズムの収束については 4 階放物型偏微分方程式の可解性や基本解に対する資料収集と収束の証明方法の検討を同時に行っているが、4 階放物型偏微分方程式の理論が十分に確立されていないため、研究が思うように進まず時間を要する。曲率流に対する正則性については、現在はは閾値型アルゴリズムにおいて定義する曲面の滑らかさを調べるために陰関数定理を 2 階または 4 階熱方程式の解に適用することを検討しているが、まだ十分な成果が出ていない。以上が進捗状況がやや遅れていると判断した理由である。
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今後の研究の推進方策 |
空間曲線からなる曲率流に対する閾値型アルゴリズムや Willmore 流に対する閾値型アルゴリズムの収束については弱解の概念を用いて考察するのが適当と考えられるが、そのためには閾値型アルゴリズムの極限において曲率流や Willmore 流がどのようにして現れるかをよく理解する必要がある。そのために曲率流や Willmore 流の弱解を考えるのではなく、滑らかな解への収束を考察することによって閾値型アルゴリズムから曲率流や Willmore 流が現れる様子を研究する。曲率流の場合はある程度目処が立っているので取り組みやすいと考えられる。Willmore 流の場合はまだ十分ではないが、形式的には閾値型アルゴリズムから Willmore 流方程式は導出できているのでそれを基に研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新情報収集/交換や研究連絡等のために関連する研究集会等への参加や関連した研究者への訪問を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、これらの研究集会や訪問等がほとんど全て中止になり、年度内に使用することができなかった。感染症の拡大が収まり研究集会等が開催されるようになった際に、関連する研究集会に参加し情報収集するための国内出張の旅費として使用する予定である。また、国内外から関連した研究をしている研究者を招聘するための旅費・謝金等に使用する予定である。
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