研究実績の概要 |
研究実施計画(iii)「渋滞吸収運転による二次的な渋滞の抑制に関する理論的評価」に取り組んだ.先行研究として,YanとOguchi は「渋滞上流のn台の車が並走しつつ低速走行することで,全N車線道路上を伝播する渋滞を除去する」という運転方法を構築したが(Yan & Oguchi, 2019),n台の車の上流に二次的な渋滞が発生する可能性は評価されていなかった.そこで,車の隊列を伝播する微小じょう乱に対する交通流の安定性(string stability)条件(Wilson, 2008; Treiber & Kesting, 2013)をYanとOguchiの方法に適用した.もしn台の車の上流がstring stable (unstable)ならば,微小じょう乱は減衰するか一定となる(成長する)ので,二次的な渋滞は発生しない(する)と判定した.系は上流が果てしなく続く半無限系を想定し,n台の車以外の交通流はintelligent driver model(Treiber et al., 2000; Treiber & Kesting, 2013)に従うと想定した.得られた結果として,様々なNとnのペアに対して,上流をstring stableに維持したまま渋滞を除去することが可能な実行パラメーター領域が存在することを見出した.本成果は,複数車線道路上において二次的な渋滞の抑制が可能であることを保証したという意義を持ち,複数車線道路上における渋滞を除去する運転方法の実用化を促進すると期待される. また,渋滞吸収運転の周辺研究として,通行可能車線数が一地点だけ減少するような複数車線道路上において,一台の低速走行車(ムービング・ボトルネック)が衝突リスクを低減することを数値シミュレーションによって見出し,複数車線道路上における一台の車による交通流改善の発展に貢献した.
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