研究課題/領域番号 |
20K03751
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川崎 英文 九州大学, 数理学研究院, 名誉教授 (90161306)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不動点定理 / ゲーム理論 / レフシェッツの不動点定理 / 中間値の定理 / アダマールの定理 / ポワンカレ・ミランダの定理 / 凸解析 |
研究実績の概要 |
連続写像や離散写像の不動点定理を研究し,それらのゲーム理論,凸解析,離散凸解析への応用を図っている.研究代表者のこれまでの研究により,戦略形ゲームや展開形ゲームに対して純戦略ナッシュ均衡の存在を示すことができた.本研究はレフシェッツの不動点定理等の代数トポロジーを用いることにより,純戦略ナッシュ均衡と混合戦略ナッシュ均衡の中間の均衡概念を提唱することを目的としている.2022年度の研究成果は以下の(1)(2)である. (1) 前年度にポワンカレ・ミランダの定理を用いてn次元中間値の定理を与えたが,その幾何学的な意味を明らかにすることによりn次元中間値の定理が自然な結果であることを示した.n次元中間値の定理を各プレイヤーの選択肢が2つの戦略形n人ゲームに適用し,混合戦略で実現可能な利得の範囲を示した.これらの研究成果を京都大学数理解析研究所と情報・統計科学シンポジウムで発表し,論文2篇が英文誌に掲載された. (2) アダマールの定理はn次元閉球からn次元ユークリッド空間への連続写像に対する零点定理である.これを有界閉凸集合上の集合値写像に拡張し,凸解析に応用した.その結果,劣微分の零点,すなわち,停留点の存在定理を与えることができた.さらに,一般劣微分への拡張をおこなった.これらの研究成果を日本応用数理学会,京都大学数理解析研究所,日本オペレーションズ・リサーチ学会で発表し,論文1篇が英文誌に掲載された.また,論文1篇を和文誌に投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京都大学数理解析研究所の研究集会で2件,日本応用数理学会で1件(オンライン),日本オペレーションズ・リサーチ学会で1件,情報・統計科学シンポジウムで1件,研究成果を計5件発表した.新型コロナの影響が残る中で多くの研究成果を発表し,討論を重ねることができたことは有意義であった. 前年度に英文誌に投稿した論文が掲載された.今年度に論文2篇を英文誌に投稿し,どちらも3月末までに掲載された.また,京都大学数理解析研究所講究録に和論文一篇が掲載され,もう1編を投稿中である.このように,本研究課題の進捗状況は順調である.
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今後の研究の推進方策 |
(a) 研究実績の概要(1)で述べたn次元中間値の定理の戦略形n人ゲームへの応用は,各プレイヤーの純戦略が2つの場合に対するものであった.純戦略が3つ以上の一般的なn人ゲームへの拡張に取り組みたい. (b) 研究実績の概要(2)で述べたアダマールの定理の集合値写像への拡張と凸解析へのその応用を引き続き研究したい. (c) n次元中間値の定理や零点定理はブラウワーの不動点定理と同値である.今後は,それよりも強力なことが知られているボルスク・ウラムの,連続最適化問題やゲーム理論への応用を図りたい. (d) 近年,リーマン多様体上の最適化の研究が盛んになってきたが,局所的な議論が中心である.大域的な研究に取り組みたい. 引き続き,日本オペレーションズ・リサーチ学会年会,日本数学会年会,日本応用数理学会年会,京都大学数理解析研究所の研究集会等に参加し,研究成果を発表したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響が残り,関連分野の学会,研究集会や国際シンポジウムの一部がオンラインで開催された.予定していた出張を取り止めたため次年度使用額が生じた. 計算機環境の一層の充実を図るために,コンピューターや周辺機器を購入する.新型コロナの感染状況が改善されたので,日本オペレーションズ・リサーチ学会を始めとする国内外の学会,研究集会への参加を増やす予定である.
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