研究課題/領域番号 |
20K03754
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
田中 輝雄 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (80227149)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多価確率微分方程式 / 分数型評価基準 / 確率制御問題 |
研究実績の概要 |
確率汎関数型多価微分方程式によって状態方程式が記述され,ランニング利得と終端利得をもつ評価関数の分数型を評価関数にもつ確率制御問題の定式化を与えて,その最適値関数の性質の考察,最適制御の存在の証明を与えた. 本研究における確率制御問題の定式化は,通常の確率制御問題の定式化と同様に弱形式(弱解)の概念の下で定式化を与えている. 最適値関数の性質の考察に関しては,状態領域はd次元ユークリッド空間の有界領域と仮定し,ランニング利得と終端利得の一様有界性の仮定の下で,数理計画法における分数計画法のパラメトリック法を用いることにより,分数型評価関数を通常の評価基準に変換し,最適値関数のパラメータに関する凸性,狭義単調減少性,リプシッツ連続性を示し,分数型評価基準の確率制御問題に対する最適値関数の状態変数に関する連続性について考察を行った.この際,拡散過程の有界領域からの退出時間の期待値についての考察が重要になる. 最適制御の存在の考察に関しては,状態領域はd次元ユークリッド空間の有界領域と仮定し,確率汎関数型多価微分方程式の集合値ドリフト項には閉値,凸性,有界性,連続性の条件を課し,集合値拡散項には閉値,凸性,有界性,連続性,コアシブの条件,対角的凸性,ある種の閉包性を課し,また,ランニング利得関数には一様可積分有界性とカラテオドリ―関数であるという条件を課し,終端利得関数には有界性と連続性の条件を課すことにより,最適制御の存在を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数理計画法における分数計画法のパラメトリック法が本研究に有効であるという着想に至ることが出来たためと考えられる.また,2020年度に購入した文献が有益であった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,確率汎関数型多価微分方程式によって状態方程式が記述され,ランニング利得と終端利得をもつ評価関数の分数型を評価関数にもつ確率制御問題の定式化と最適制御について考察を行ったが,今後は,最適停止問題の定式化を与え,最適停止規則の存在,最適値関数の性質,特徴付けを行うとともに,これらの研究を現実の諸問題への応用を試みることである. また,確率汎関数型多価微分方程式を確率多価微分包含方程式にした場合の確率制御問題についても考察を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,対面形式での研究打合せができなかったこと,また,学会発表が急遽オンライン開催等に変更になったために2021年度に残額が生じた.2022年度には,研究打合せ旅費,学会発表旅費,物品費(集合値解析学関連図書,確率微分方程式関連図書,確率制御関連図書等の購入費)に使用する.
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