研究課題/領域番号 |
20K03755
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
竹内 康博 青山学院大学, 理工学部, 客員教授 (20126783)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生物数学 / 構造相似性 / タイムラグ / 非線形現象 / カオス |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は以下の通りである.生態系における生物種間の相互作用や感染症の伝播,体内におけるウイルスや癌と免疫系の相互作用など,生物システムにおける様々な興味深い複雑な非線形現象が明らかにされてきた.しかし,このような非線形現象を惹起させる個々のシステムの構造は謎のままである.本研究は様々な生物システムがその基本構造に本質的な相似性を有することに着目し,基本数理モデルに統合しその定性的な性質を解明する(目的1). 得られた基本数理モデルに生物学・医学的に合理的な非線形構造を導入し,個々のシステムに惹起される非線形現象を解明する(目的2).特にモデルにタイムラグを導入し,時間遅れがモデルの大域的挙動に与える影響を考察する(目的3).基本数理モデルの解析に必要な数学的概念や数学的手法を確立するとともに,個々の生物を含むシステムにおける様々な非線形現象の理解を深め,生物学や医学に必要な実験を提案していくことを目指す(目的4). 本年度は様々な生態系や感染症,癌・免疫系における具体的な問題を取り上げた.生態系モデルでは種の警戒色や被食者のグループディフェンスが系の性質に与える影響を考察した.感染症ではC型肝炎感染症やコレラ感染症について数理モデルを構築し,前者では感染防御のためのインパルス制御,後者ではTVやソーシャルメディアの宣伝効果を考察した.また感染症伝播モデルにワクチン接種や感染者の収容可能なベッド数制限を導入したモデルを構築し,それらの感染症伝播に対する影響を考察した.ガン・免疫系では,抗癌マクロファージやT細胞を導入した数理モデルを構築し,モデルの定性的性質を考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は様々な生態系や感染症,癌・免疫系における具体的な問題を取り上げ,それぞれ数理モデルを構築し,その定性的性質や分岐現象を解析した。 その結果,対象とする系独自の興味深い性質や構造を明らかにしてきた。またこれらの数理モデルの諸性質と実現象の関連を考察できた.また異なる系に共通する性質や構造があることを再確認することができた.本研究の目的である数理モデルに生物学・医学的に合理的な非線形構造を導入し,個々のシステムに惹起される非線形現象を解明する(目的2)ことは実施できた.しかし,本研究の目的である,様々な生物システムがその基本構造に本質的な相似性を有することに着目し,基本数理モデルに統合しその定性的な性質を解明する(目的1)には至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
今後は様々な生物システムがその基本構造に本質的な相似性を有することに着目し,基本数理モデルに統合しその定性的な性質を解明する(目的1)とともに,数理モデルにタイムラグを導入し,時間遅れがモデルの大域的挙動に与える影響を考察する(目的3).そのためには,国内外の研究者との研究交流が必要であり,新型コロナ流行下でも可能な研究協力を模索していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な新型コロナ感染症の流行により、国内外の研究者との研究実施がオンラインにならざるを得なかった。そのため旅費関連の経費を使わなかったので、次年度の経費として使用することとした。
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