研究課題/領域番号 |
20K03756
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田畑 耕治 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 准教授 (30453814)
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研究分担者 |
中川 智之 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 助教 (70822526)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 分割表解析 / 高次元漸近理論 / 対称性 / 欠測データ / 適合度検定 |
研究実績の概要 |
Burman (2004) などでは標本数とともにセル数も大きくなる漸近論(高次元漸近論)を用いて、適合度検定と独立性の検定に関する統計量の極限分布がカイ二乗分布ではなく正規分布であることを示している。2020年度は、正方分割表解析における対称性の検定問題に対して、高次元漸近理論の下での検定統計量の漸近分布の導出について研究を行った。Morris (1975) やBurman (2004) などの文献調査、離散項の評価について検討したが、さらなる調査・検証が必要と考えられるため2021年度も引き続き検討する。 Kadane (1985) は、欠測を含む分割表に対するオッズ比の推定について議論している。Ma, Geng and Li (2003) はグラフィカルモデルでも特に分解可能モデルに着目し、その識別可能性について網羅的な研究を行なっている。また、Takai and Kano (2008) は、無視できない欠測を含む2×2分割表に関して独立性の検定を与えている。2020年度は、Takai and Kano (2008) の方法を参考にして、無視できない欠測を含む2×2分割表に関する対称性の検定を与え、計算機での実装と様々なシミュレーション実験を行った。2021年度は、これらの結果を論文としてまとめる予定である。 正方分割表の解析において、周辺分布の同等性・非同等性は古くから多くの論文で議論されている。2020年度は、分割表の背後に2パラメータのGumbel分布が想定できる場合に当てはまりが良いことが想定されるモデルを提案し、提案モデルとモーメントの同等性を同時に満たすことが周辺同等性と同値であることを示した。これらの結果をまとめた論文が、国際ジャーナルで出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、正方分割表解析における対称性の検定問題に対して、高次元漸近理論の下での検定統計量の漸近分布の導出について研究を行った。Morris (1975) やBurman (2004) などの本研究に関連する文献調査に関して大学院生や他大学の研究者も含めたゼミを行い、多くの議論を行った。その結果、離散項の評価に関する問題点や課題が明確になり、それらを解決するために2021年度も引き続き検討を行うこととした。 2020年度は、Takai and Kano (2008) の方法を参考にして、無視できない欠測を含む2×2分割表に関する対称性の検定を与え、計算機での実装と様々なシミュレーション実験を行った。シミュレーション実験においては、関連する研究者とzoomミーティングを行うなどして、シミュレーションのシナリオの検討、論文としてまとめる際の方向性を議論した。2021年度は、これまでに得られた結果を論文としてまとめる予定である。 上記の他にも、対称性の検定に関するφ-divergence型統計量の高次のオーダーの導出、φ-divergence型統計量の離散項のオーダー評価、欠測を含んだr×r分割表の対称性の検定、欠測を含む分割表に関するベイズアプローチについて、文献調査結果の報告や意見交換を数回実施した。これらの課題について、文献調査や関連研究の整理が出来たことから、2021年度は具体的な課題を解決するために研究を進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は、欠測を含んだr×r分割表の対称性の検定、欠測を含む分割表に関するベイズアプローチについて、方法論の検討、計算機への実装、実データ解析を主に担当する。欠測を含んだ2×2分割表の方法をr×r分割表へ拡張するためには、識別性の担保が不可欠である。この問題の解決が当面の目標である。研究分担者は、対称性の検定に関するφ-divergence型統計量の高次のオーダーの導出、φ-divergence型統計量の離散項のオーダー評価、対称性の検定に関する高次元分割表解析について、オーダー評価、離散項の導出、数学的な性質の導出を主に担当する。離散項の導出がボトルネックであるとの報告を受けていることから、この問題が解決されれば、他のテーマも順調に進むことが予想される。所属が同じであるという利点を活かして、定期的な意見交換や進捗報告を行いながら、2020年度同様に研究を推進する。また、双方のテーマを融合した研究課題も考えられることから、テーマの進捗状況に応じて柔軟に解決すべき問題を選択する予定である。 研究が上手く進まない場合には、zoomミーティングなどを活用して、外部の研究者などと意見交換をする予定である。また、国内外の学会やシンポジウムに参加し、最新の研究動向をチェックすると共に、外部の研究者とのネットワークの拡張、情報交換を積極的に行う予定である。さらに、研究室に多くの大学院生が所属していることから、大学院ゼミなどでも問題意識を共有し、意見交換をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、国内学会やシンポジウム及び国際会議等へ参加する際の旅費として計上していた予算を消化することができなかった。新型コロナウイルス感染症が終息し、国内での移動や海外への渡航が自由に出来るようになれば、旅費として使用する予定である。もし、終息しない場合には、コンピュータの新調などを検討し、計画的な予算執行を目指す。
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