研究課題/領域番号 |
20K03759
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
加藤 昇吾 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 准教授 (60468535)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 統計数学 / 回帰分析 / 方向統計学 |
研究実績の概要 |
風向や分子のねじれ角は観測値が方向として表され、このような方向の観測は様々な学術分野に存在する。方向の観測を含むデータ(方向データ)には、既存の実数値データのための回帰モデルをそのまま応用することができないという問題がある。そこで本研究課題では、方向データのための回帰モデルを提案し、その統計的性質を明らかにする。
1年目にあたる2020年度には、被説明変数が方向の変数、説明変数が実数値変数となる回帰モデルを定義し、その回帰曲線の性質を考察した。そして、提案した回帰曲線は、パラメータの解釈が容易であり、適度な柔軟性を持つことを明らかにした。また、回帰曲線において用いた変換は、ある条件において写像の合成に関して群を成すことを示した。
回帰モデルの定義にあたっては、回帰曲線としてメビウス変換を拡張した写像、誤差分布としては球面上のコーシー分布を用いた。球面上のコーシー分布は、Kato and McCullagh (2020)による論文「Some properties of a Cauchy family on the sphere derived from the Mobius transformations」(Bernoulli, 26巻, 3224-3248頁)において提案され、メビウス変換に関して閉じているなどの性質を持つ。また、同論文では、球面をそれ自身に写すメビウス変換の性質についても考察しており、そのメビウス変換に線形変換を合成した写像を、回帰モデルの回帰曲線として提案した。この回帰曲線は、メビウス変換や線形変換と同様にパラメータの解釈が容易であり、また、メビウス変換よりも柔軟な変換となっている。また、回転パラメータを単位行列としたときには、写像の合成に関して群を成すという扱いやすい性質が成り立つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況は、「おおむね順調に進展している」とした。これは、研究計画調書の「研究目的、研究方法など」に記載した研究目的を4年間で達成する計画において、初年度としては十分な進展が得られたと考えられるためである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、研究計画調書で挙げた以下の2つの研究を推進することである。1つは、2020年度で提案した回帰モデルの統計的推測を議論することである。具体的には、最尤推定とベイズ推定によるパラメータ推定を考察し、パラメータの有意性の検定も可能であるかどうかについても検討する。2つめの研究は、被説明変数が方向の変数、説明変数が方向の変数と実数値変数が混在する多変数となる回帰モデルを定義し、その統計的性質を明らかにすることである。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】 新型コロナウイルスの感染拡大により、国内外の出張を行うことができず、研究計画調書の提出時に見積もっていた旅費を使用しなったためである。 【使用計画】 次年度以降は国内外の出張回数を当初の予定よりも増やし、今年度には十分にできなかった対面での研究打ち合わせおよび研究発表を積極的に行っていく予定である。
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