研究課題/領域番号 |
20K03760
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
吉脇 理雄 大阪公立大学, 数学研究所, 特別研究員 (90613183)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 位相的時空間解析 / 2パラメータパーシステントホモロジー / ノイズ安定性 / 導来同値 / Auslander-Reitenクイバー / 区間表現 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は位相的時空間解析を確立するのに必須である2パラメータパーシステントホモロジーについて、データのノイズに対する安定性を明らかにすることである。より具体的には、導来同値を用いてより取り扱いやすいものへと帰着させる考えに基づいて、安定性の代数部分である代数的安定性定理を以下のように明らかにすることであった。(い) 2パラメータパーシステントホモロジーと導来同値な対象で代数的安定性定理を示すこと。(ろ)代数的安定性定理は、導来同値のもとで伝播すること。(は)代数的安定性定理は、導来圏から制限可能であること。(に) 2パラメータパーシステントホモロジーと導来同値な対象について、その導来圏へ(い)の結果を拡張すること。 2020年度は(い)、(ろ)、(は)を達成し、このエッセンスを含む論文が今年度オンラインで出版された(doi.org/10.1142/S1793525322500091)。昨年度は引き続いて(に)について取り組み、一部の(ほ)2パラメータパーシステントホモロジーの新たな距離を提案し、代数的安定性定理を示した。今年度はこれを全体に拡張するための策を改めて検討した結果、「(へ)区間表現の性質を明らかにすること」が目的の達成のために必要となると判断した。区間表現は1パラメータパーシステントホモロジーでは出力であるパーシステンス図を与える。2パラメータでは一致しないが、区間表現による近似の可能性が示されており、その性質を明らかにすることが本研究に寄与すると考えたためである。上記(へ)について研究を行い、一部をarXiv:2207.03663にて発表済み。国内の研究集会や国際会議でも報告を行った。 新たな策の検討及び他研究者との交流の場として、オンライン研究集会(https://sites.google.com/view/ph-repn2023/)を主催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画では、二年目に「2パラメータパーシステントホモロジーの新たな距離を提案し,ノイズに対して安定であることを明らかにする」こと、すなわち、研究実績の概要で述べた(に)とその結果として(ほ)を得ることに取り組むこととなっていた。三年目はそれを元に(b)既存研究との比較により、それらを包括した研究となっていることを明らかにする計画であった。昨年度は(に)(結果として(ほ)も)一部を達成できたものの、(に)全体への拡張に困難を伴っていた。そのため今年度は研究集会を開催するなど新たな策を検討、その策について研究を行う必要が出てきた。すなわち、(に)の困難さを突破するために考えていた具体策「直接的に導来圏の対象を特徴付けを行うことと,導来圏の分解の道具である recollement を用いること」に加えて、新たに「(へ)区間表現の性質を明らかにすること」が必要となった。したがって総体として遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画の2年目以降は(a)2パラメータパーシステントホモロジーの新たな距離を提案し、ノイズに対して安定であることを明らかにすること、(b)既存研究との比較により、それらを包括した研究となっていることを明らかにすることを順次行う計画であった。研究集会で得た知見や(へ)の研究を進めることで、(a)での遅れを取り戻し、(b)へ進める。 すなわち、(へ)の区間表現の研究を用いて(に)2パラメータパーシステントホモロジーの導来同値な対象について代数的安定性定理が導来圏へ拡張できることを明らかにすることを一部ではなく全体まで広げることを試み、既存研究との比較を行う。なお、文献にあたるだけでなく、今年度も研究集会を開催するなどして、他研究者との交流を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は変わらずコロナ禍のため、海外出張や研究者の物理的な招聘が難しく、主催した研究集会もオンラインで行ったからである。 今年度分の使用計画としては、研究目的を達成するため、引き続いて研究集会を主催し、研究者の招聘に充てる。また、今年度は国内の状況を鑑み、国内出張へ充てる計画である。
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