研究課題/領域番号 |
20K03766
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 健自 京都大学, 情報学研究科, 助教 (80303882)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動的臨界現象 / テンソルネットワーク / 実空間繰り込み群 / エンタングルメント容量 / 量子回路学習 / 有限サイズスケーリング / 多様体最適化 |
研究実績の概要 |
本年度は主に以下の3つの研究トピックスに取り組んだ。(1)テンソルネットワーク形式を用いて非平衡臨界現象の臨界特性について実空間繰り込み群法の安定化と改善をおこない、動的臨界現象の臨界点の解析を進めた。例えば、動的臨界現象を示すコンタクトプロセスは、平衡系の臨界現象に似たスケーリング関係式が臨界点において現象論的に成り立つことが多くの数値研究により示されている。さらに、ユニバーサリティ性も示すことから、臨界点を特徴づける普遍的特性の存在が信じられている。そこで、先行研究で試みられたユニバーサリティ性を実空間繰り込み群の固定点としてテンソルネットワーク形式を用いて特徴づける研究を進展させた。特に、計算手法の安定化を進め、長距離のエンタングルメント構造に特徴的なスペクトルがあることを確認した。(2)量子回路学習の性能と量子回路のエンタングルメント構造の関係をテンソルネットワーク形式を用いて数値的に調べた。その結果、エンタングルメント容量の大きい回路の学習性能が高いことがツリー型高qubit量子回路において示せた。また、ユニタリー素子の最適化に多様体最適化の概念が有効であることもわかった。(3)臨界現象の有限サイズスケーリング法にフィードフォーワード型ニューラルネットワークを用いたスケーリング関数のモデリングが有効であることを示せた。この結果、カーネル法を用いた場合よりも計算量のスケーリングが大幅に改善された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テンソルネットワーク形式のエンタングルメント構造に着目することで、テンソルネットワーク形式を多方面へ展開することができた。また、多様体最適化が量子回路学習に有効であることなど示すなど、数値的手法の新しい応用先を開拓した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、非平衡臨界現象、量子回路学習などテンソルネットワーク形式の新しい応用先を開拓したきた。今後も、引き続き、機械学習・データ科学への応用を積極的に展開していき、それぞれの課題におけるテンソルネットワーク形式の示すエンタングルメント構造に着目した研究を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症による出張の取り止めや半導体不足による物品購入の遅れなどが主因であるが、それぞれの状況の改善により、次年度はスムーズな執行がはかれると考えている。
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