テンソルネットワークの表現能力はそのネットワーク構造に大きく依存するが、従来手法ではネットワーク構造は固定されており、その最適化が行われることはなかった.我々は主に2つの分野におけるテンソルネットワーク法にネットワーク構造の自動最適化を導入するアルゴリズムの定式化を行った.一つ目は量子多体系の基底状態計算である.エンタングルメントエントロピーの最小化を行う局所的なネットワーク構造の再定義を行うアルゴリズムを、動的密度繰り込み群法の2サイトアルゴリズムをベースに提案した.この手法の利点は、基底状態のエンタングルメント構造と一致したテンソルネットワーク構造を局所的なネットワーク構造の組み換えだけで行うことができる点である.階層的な相互作用を持つ量子スピン系の場合は、階層的なエンタングルメント構造を反映して、階層的なネットワーク構造など妥当な構造が得られた.2つ目は量子的な生成モデルである.我々は基底状態計算と同様に、相互情報量最小化に基づく局所的なネットワーク構造の再定義を行うアルゴリズムを提案した.この手法を用いるとデータに応じたネットワーク構造を自動的に構築することで、従来法よりも大幅なパフォーマンスの改善が得られることがわかった.その他にも、量子回路シミュレーターにおけるエンタングルメント構造を反映させた計算最適化や、ニューラルネットワークを用いた有限サイズスケーリング解析法の提案など、関連する研究を行なった.
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