研究課題/領域番号 |
20K03773
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
中村 統太 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50280871)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 格子変形 / 機械学習 / 古典スピン系 / 相転移 / モンテカルロシミュレーション |
研究実績の概要 |
科研費補助金によって購入したパーツを用いてGPUクラスターシステムを自作した。これは、この科研費課題で行うシミュレーションの土台となるもので、今後数年間の運用に耐えられるものにした。 以前行った予備的研究の結果との比較も兼ねて、まずは厳密解の存在する2次元イジング模型において検証を行った。格子変形のパターンを色々変えながら、変形パターンと得られる結果の妥当性、計算効率の比較を行った。 格子変形に伴い、系の各々のスピンが感じる有効温度は場所によって変化する。この有効温度の空間勾配が極めて重要であり、この勾配が消失する場所で測定値が厳密な結果と良い一致を示すことが確認できた。一方、温度勾配が大きな場所があると、その場所の熱浴からのエネルギー流が発生し、その他の場所にも影響を及ぼすこともわかった。そのため、変形パターンとしては、興味のある温度領域で勾配が消失し、それ以外の場所でも勾配増大を防げるものを選ぶ必要があることがわかった。広い温度領域で良好な結果を得るためには、一つの変形パターンに固定したままでのシミュレーションでは限界があり、そのために格子変形を徐々に変化させる手法を新たに考案し、検証を行った。これは、勾配消失する温度を徐々に変化させながら、温度領域全体をくまなくスィープしていく手法で、非常に将来性、汎用性のある手法であることがわかった。 格子変形シミュレーションで得られた結果を用いて、機械学習により臨界温度や臨界指数を精度良く求めることも出来た。これらシミュレーション研究と並行して、連携研究者の堀田知佐准教授と共同で転送行列法などの厳密な手法を用いて、格子変形の古典スピン系への影響を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍によって、オンライン授業導入などの教育義務の負担増により、初年度前期には科研費研究で予定していたエフォートを達成することができなかった。後期からは順調に研究が進んでいる。しかし、世界的な半導体不足によって、2年目以降に予定していたGPUクラスターマシンの追加導入が出来るかどうか、不透明な状況が予想される。その場合、計算規模の縮小を強いられる可能性もある。ただし、計算アルゴリズムの提案と検証は十分可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
格子変形についての知見が蓄積されてきた一方、機械学習との連携がまだ達成されていない。シミュレーション中に自律的に格子変形を変えながら相転移温度に近づくアルゴリズムの開発を今後加速していく。 一方、格子変形シミュレーションに関しては、これを未解決の問題に応用していく。非整合相の出現が期待されているANNNI模型や量子アニーリングに実装されている横磁場イジング模型、スピングラス模型を予定している。
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