研究課題/領域番号 |
20K03782
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 正英 金沢大学, 学術メディア創成センター, 教授 (20306533)
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研究分担者 |
鈴木 良尚 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (60325248)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パッチ粒子 / コロイド / 異方性 |
研究実績の概要 |
パッチ粒子は,パッチ由来の異方的相互作用により特異な構造を形成し,フォトニック結晶などの素材として期待されている。パッチ粒子が作る構造の研究は進みつつあるが,形成過程の理解は不十分である。さらに,パッチによる異方性と粒子形状による異方性があり,それぞれの効果が十分に分離されて理解されていない。本研究では,将来の材料として活用するための巨大良質結晶の作成を目指し,パッチによる相互作用の異方性と粒子の非球形に由来する異方性の効果を,シミュレーションと実験により明らかにすることを目指す。 本年度は,粒子が球形である場合についてシミュレーションを行った。パッチの表面積に対する割合とパッチに起因する相互作用距離を変えることで,二次元および擬二次元系におけるパッチ粒子が形成するクラスターの形状や構造がどのように変化するかを調べた。二次元におけるクラスター構造については,パッチに起因する相互作用距離が長くなることで,従来知られていなかった正四角形四量体や正五角形5量体,正六角形6量体といった正多角形多量体が現れることを発見した。本研究はLangmuir誌に発表済みである。また,擬二次元系での2相構造が,パッチの割合と相互作用距離によりどのように変化するか調べた。その結果,相互作用距離が短い場合には,正四面体型4量体,正八面体6量体,五角両錐型7量体が形成され,十分にパッチの割合が大きいときには面心立方格子の(111)面に相当する2相の三角格子が現れることが分かった。相互作用距離が長くなると,三角柱状クラスターの形成も見られ,パッチ面積が広がることで,面心立方格子の(100)面に相当する正方格子構造が現れることが分かった。この研究はACS Omega誌に掲載済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の4月から6月においては,コロナ禍の影響で在宅勤務により主として教育活動に専念するという大学の方針で,ほぼ研究を行うことができなかった。そのために研究の遅れが生じてしまった。本来であれば,今年度行った研究と同様な研究を,粒子の形状が非球である場合について行い,相互作用の異方性と形状の異方性の効果を比較するつもりであったが,達成できなかった。この点については,2021年度に行う予定である。 また,当初考えていた学会発表などもすべてオンライン開催となったり延期になったために,予算の使用についても不十分であり,今後の見直しをする必要が出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度については,相互作用の異方性の効果に着目して,球状粒子のパッチ面積の割合と相互作用距離に関する依存性を調べた。2021年度については,ダンベル型粒子を念頭におき,粒子の形状も加わった場合について,粒子の作るクラスターや構造が粒子の異方性が加わることでどのように変化するかを調べる。特に,将来の大型結晶作成を考えると,良質二次元結晶を作成し,それを土台としてエピタキシャル成長させることが有力な手法と考えている。そのため,本年度も二次元系,擬二次元系を主として調べることとする。 また,実験的には,まずは,シリカ粒子の引力系コロイド結晶化やシリカ粒子の結晶化の素過程の解明に着手しており,これらを引き続き推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍により,予定していた成果報告のための学会参加などがすべてオンライン開催となったために,旅費が使用できなかった。また,分担者として参加している他の科研費等の補助金についても同様な状況なため,連動して予算の組みかえをする必要があり,基金として柔軟に使用が認められている本予算は執行率が低くなった。 2021年度については,通常の学会開催なども増えると思われるので,通常通りに使用できることを期待している。また,本予算で申請し参加する予定である国際会議が,1年延期になったので,場合によっては,無理に予算の使用はせずに,予算の執行期間の延長なども検討する。
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