パッチ粒子は,パッチ由来の異方的相互作用により特異な構造を形成し,フォトニック結晶などの素材として期待されている。本研究では,将来の材料として活 用するための巨大良質結晶の作成を目指し,パッチによる相互作用の異方性と粒子の非球形に由来する異方性の効果を,シミュレーションと実験により明らかに することを目的とする。 昨年度,パッチ粒子の結晶化の素過程を調べる前段階として,枯渇引力を引力起源とする等方的なコロイド粒子の結晶化について調べた。その過程で,当初想定もしなかった多様な構造が,コロイド結晶のヘテロエピタキシャル成長時に生じることが分かった。そのため,パッチ粒子の結晶化の素過程を調べる前段階という位置づけのみならず,枯渇引力系のコロイド結晶のヘテロエピタキシャル成長そのものが持つ新奇性から,エピタキシャル粒子の基板粒子に対する粒径比によりどのような構造が形成されるかについて,網羅的に調べることにした。その結果,ハニカム構造(正六角形タイルからなる構造)に加えて,正六角形タイルと正三角形タイルと正方形タイルからなるホイール状の構造,五角形タイルと三角形タイルからなる構造,および基板の三角格子に対して,基板に垂直な方向を軸として0度,15度および30度回転した三角格子などが,エピタキシャル粒子の基板粒子に対する粒径比ととに表せることを明らかにした。これらの構造は実験的にも観察されており,この結果をパッチ粒子に応用すれば,実験的で未発見の構造の探索にも有効であることが分かった。なお,この結果については,Scientific reports 誌に出版済みである。
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