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臨界塑性挙動に対して素過程のあり方が及ぼす影響を明らかにするため，転位を素過程とする規則構造固体（結晶）と局所原子再配置運動を素過程とする不規則構造固体（アモルファス固体）の分子動力学シミュレーションを実行し，塑性変形の規模統計の特徴を調べた。
シミュレーションにおいては先行研究と同様に，不規則かつ間欠的な塑性イベントの発生が確認できた。個別のイベント規模を定量化するために負荷応力の解放量に焦点を当てたが，時系列データに含まれる熱ノイズ(原子の熱的な振動に由来するノイズ)を除去するために，時系列処理と平衡配置緩和を適用した。
時系列処理としてローパスフィルターによる短周期振動の除去を行った結果，フィルタリング周波数によって分布の特徴が左右される傾向があることが判明した。これに対して，平衡配置（原子に加わる力がトータルで釣り合うような配置)への緩和を用いることで，このような依存性なしに熱ノイズの除去した統計分布が評価可能となった。この結果においては，両系の間で特徴指数の有意な差異は認められなかった。ただし，計算時間及び記憶容量の制限からデータ数および時間分解能が低下しており，より精密な評価による系統的な解析の余地がある。この点については，追加のシミュレーションによる解析が求められる。
また，上記の変形素過程の異なる2つの固体構造を接合した固体における塑性変形シミュレーションを行うことで，２つの素過程の相乗効果を明らかにした。 さらに，ベキ分布の特徴指数を左右する因子について検討するために，計画とは異なる対象であるが遅延力学系での臨界挙動での普遍性を調査した。この結果，内部散逸が特徴指数を左右する因子であることが明らかになった。このことから，材料塑性における素過程のもたらすエネルギー散逸が臨界挙動に影響する可能性が示唆された。
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