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2020 年度 実施状況報告書

非エルミート・トポロジカル相におけるバルクエッジ対応とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K03788
研究機関広島大学

研究代表者

井村 健一郎  広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 助教 (90391870)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード非エルミート量子系 / トポロジカル絶縁体
研究実績の概要

バルクエッジ対応はトポロジカル物質の研究において基本的な考え方である。一方、非対称ホッピング型のような非エルミート系においては系のバルクの性質が境界条件によって変化する。この典型例が非エルミート表皮効果である。このため、バルク状態=周期境界条件、エッジ状態=開境界条件というエルミート系の常識がそのままでは使えない状況が現れる。実際、周期境界条件下で計算したトポロジカル数と開境界条件下でのエッジ状態の有無が一般には対応しない。私はこの問題が一般化された周期境界条件を用いることによって回避できることを示した[1]。論文[2]ではこの考え方をさらに推し進め、一般化周期境界条件下の固有関数が振幅の変調を含めた一般化されたブロッホ関数の形に書けることに注目して一般化ブロッホバンド理論を提案した。本定式化により、トポロジカル絶縁体の概念が自然な形で非エルミート系に拡張された。
また、上記研究と並行して非エルミート系、トポロジカル絶縁体に関する研究をいくつか行った。論文[3]では、円筒状トポロジカル絶縁体における特徴的な有限サイズ効果について、論文[4]では、PT対称な非エルミート系における散乱問題を、また、論文[5]では超伝導デバイスにおける量子エンタングルメントを議論した。
[1] K.-I. Imura, Y. Takane, Phys. Rev. B 100, 165430 (2019). [2] K.-I. Imura, Y. Takane, Prog. Theor. Exp. Phys. 2020, 12A103 (2020). [3] K. Shobe, K. Kuramoto, K.-I. Imura, N. Hatano, Phys. Rev. Research 3, 013223 (2021). [4] M. Governale, B. Bhandari, F. Taddei, K.-I. Imura, U. Zuelicke, New J. Phys. 22, 063042 (2020). [5] R. Jacquet, A. Popoff, K.-I. Imura, J. Rech, T. Jonckheere, L. Raymond and T. Martin, Phys. Rev. B 102, 064510 (2020).

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

バルクエッジ対応はトポロジカル物質の研究において基本的な考え方であり、本研究計画の柱でもある。一方、非対称ホッピング型のような非エルミート系においては系のバルクの性質が境界条件によって変化するため(この典型例が非エルミート表皮効果)、バルク状態=周期境界条件、エッジ状態=開境界条件というエルミート系の常識がそのままでは通用しない。実際、周期境界条件下で計算したトポロジカル数と開境界条件下でのエッジ状態の有無が一般には対応しない。我々は本研究においてこの問題が一般化された周期境界条件を用いることによって回避できることを示すことができた。これは本研究計画において大きな進展と言える。

今後の研究の推進方策

これまで典型的な非エルミート性の現れである表皮効果があるような系において、エルミート系のトポロジカル物質の意味で系がトポロジカルな性質を示すとき、そのような系におけるバルクエッジ対応にきちんとした解釈を与えるという観点で研究を行ってきた。一方、最近では、非エルミート系における表皮効果はそれ自体がトポロジカルな現象であるという指摘がなされている。[1,2]本研究では、今後トポロジカルな現象としての表皮効果においてバルクエッジ対応がどうなっているか精査していきたい。
[1] K. Zhang, Z. Yang, and C. Fang, "Correspondence between winding numbers and skin modes in non-Hermitian systems," Phys. Rev. Lett. 125,126402 (2020).
[2] N. Okuma, K. Kawabata, K. Shiozaki, and M. Sato, "Topological origin of non-Hermitian skin effects," Phys. Rev. Lett. 124, 086801 (2020).

次年度使用額が生じた理由

昨年度、新型コロナウィルスの感染拡大のため、予定した海外渡航や国内出張等をキャンセルせざるを得なかった。今年度は、研究のための出張を再開できればと思う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Victoria University of Wellington(ニュージーランド)

    • 国名
      ニュージーランド
    • 外国機関名
      Victoria University of Wellington
  • [国際共同研究] Aix Marseille Univ., CPT-CNRS(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Aix Marseille Univ., CPT-CNRS
  • [雑誌論文] Non-Hermitian Fabry-Perot Resonances in a PT-symmetric system2021

    • 著者名/発表者名
      K. Shobe, K. Kuramoto, K.-I. Imura, N. Hatano
    • 雑誌名

      Phys. Rev. Research

      巻: 3 ページ: 013223

    • DOI

      10.1103/PhysRevResearch.3.013223

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Finite-size effects in cylindrical topological insulators2020

    • 著者名/発表者名
      M. Governale, B. Bhandari, F. Taddei, K.-I. Imura, Ulrich Zuelicke
    • 雑誌名

      New J. Phys.

      巻: 22 ページ: 063042

    • DOI

      10.1088/1367-2630/ab90d3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Theory of non-equilibrium noise in general multi-terminal superconducting hydrid devices: Application to multiple Cooper pair resonances2020

    • 著者名/発表者名
      R. Jacquet, A. Popoff, K.-I. Imura, J. Rech, T. Jonckheere, L. Raymond and T. Martin
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 102 ページ: 064510

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.102.064510

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Generalized Bloch band theory for non-Hermitian bulk-boundary correspondence2020

    • 著者名/発表者名
      Ken-Ichiro Imura, Yositake Takane
    • 雑誌名

      Prog. Theor. Exp. Phys.

      巻: 2020 ページ: 12A103.

    • DOI

      10.1093/ptep/ptaa100

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] PT対称な系における非エルミート版ファブリー・ペロー共鳴2021

    • 著者名/発表者名
      生部賢,倉本啓一,井村健一郎,羽田野直道
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会:領域4, 12pD2-4(2021年3月12-15日)
  • [備考] Ken Imura's web site

    • URL

      https://home.hiroshima-u.ac.jp/imura/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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