研究課題
基盤研究(C)
液体の水について、1万気圧、500度までの広い温度圧力領域における音速緩和強度の等高線図(温度圧力依存性)を作成した。2つの顕著な山状の増大を確認することができたが、この特徴は定積比熱の等高線図とほぼ一致していた。これは音波の緩和現象が比熱の起源であることを実験的に特定したことを意味する。2つの増大の起源については、高温域のものは液体-気体相転移臨界ゆらぎ、常温常圧付近の低温域のものは過冷却域に存在するとされる液体-液体相転移に対応した臨界ゆらぎによるものと結論づけた。
不規則系物理学
水は最もありふれた液体ですが、熱力学特性は他とはかなり異なる「異常液体」で、未だそのメカニズムは十分には分かっていません。今回の研究では比熱の起源が初めて実験的に特定できており、非常に価値のあるものです。今後水あるいは水溶液などの熱力学特性の理解が進み、様々な方面への応用が期待できます。また学術的には、液体-液体相転移という新しいタイプの相転移について、既知の液体-気体相転移との類似点と相違点を整理して議論しており、今後相転移論の進展が期待できます。