研究課題/領域番号 |
20K03795
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中原 幹夫 近畿大学, 理工学総合研究所, 研究員 (90189019)
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研究分担者 |
NICCHORMAIC SILE 沖縄科学技術大学院大学, 量子技術のための光・物質相互作用ユニット, 教授 (10715288)
BUSCH Thomas 沖縄科学技術大学院大学, 量子システム研究ユニット, 教授 (30715272)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非マルコフ的緩和 / Majorana表示 / 量子状態トモグラフィー / 光.物質相互作用 / 光ナノファイバー / 近接場 / 量子ゲート |
研究実績の概要 |
中原は,制御可能な非マルコフ環境下での量子情報の劣化を研究し,近藤とNMR量子コンピュータで実証実験を行った.結果はNew Journal of Physicsに出版した.また前回の科研費の研究の継続として,高次元複素ベクトルのMajorana表示を研究した.数学者との共同研究で,複素ベクトルの内積をMajorana表示を用いて表すにはTemperley-Liebカテゴリーが有力な手段となることを発見したが,まだ結論には至っていない.密度行列を測定する量子状態トモグラフィーの研究を始めた.各基底ベクトル状態の観測確率を測定するIBMQタイプの測定と,x方向の磁化を測定するNMRタイプの両方のスキームにおいて,より効率的な測定プロトコルを研究している.特にIBMQタイプの測定で,元になる系に同じ次元の系を加えてエンタングルさせることにより,元の系のすべての密度行列要素を複合系の対角要素に再配置させ,一度の測定で密度行列要素がすべて決定できるプロトコルを開発した. BuschとNic Chormaicはともに光・物質相互作用の研究を行った.光と原子の間の結合は,量子ゲートの実装や離れた原子を結合させる上で重要な要素である.本年度は光ナノファイバーの近接場に閉じ込められた原子を考えた.光ナノファイバーはキャビティとして機能するため,(ほぼ)任意の距離だけ離れた原子を結合するのに使用できる.現在,単一のファイバーへの結合から複数のファイバーへの結合へと理解を広げ,さらなる自由度と柔軟性を提供しようとしている.このために開発したフォーマリズムに関するプレプリントarXiv:2104.11381をPhys. Rev. Aに投稿した.また,Nic Chormaicは今後の実験で結合を最適化することで,4波混合の光学的深さを増すことができるように,実験作業に深層学習アルゴリズムを導入した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中原はSubriemannian測地線の数値解析を始めたが,非マルコフ緩和その他の研究に手間取りまだ成果を挙げていない.Cartan分解は令和3年度から始める予定である.BuschとNic Chormaicの研究はほぼ予定通り進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
中原はSubriemannian測地線の数値解析を続け,いくつかのケーススタディを行う.また,その結果を協力者森本とGungorduと吟味し,理論的解析に結び付ける.また,協力者近藤にNMRの実証実験を依頼する.20年度に解決できなかったMajorana表示による高次元複素ベクトルの研究をさらに続ける.また効率的な量子状態トモグラフィーはいくつか興味ある結果が得られているので論文にまとめる.令和2年度に手を付けられなかったCartan分解は,数学的基礎をサーベイし,目的とする量子回路の分解の糸口をつかむ.Nic ChormaicとBuschは現在の研究を続け,光学なのファイバーにトラップされた原子の実証実験を行う.COVID-19の流行が収まれば,中原は沖縄科学技術大学院大学にBuschとNic Chormaicを訪問してワークショップを開催し,現在までの進展を紹介する.
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次年度使用額が生じた理由 |
Nic Chormaicはセミナーのために分子科学研究所の大森賢治教授を沖縄科学技術大学院大学に招聘する予定であったが、2020年3月以降不要不急の訪問者はすべて禁止され,代わりにオンラインでセミナーを開催した.Thomasも同様に沖縄科学技術大学院大学において共同研究者によるセミナーが開催できず,旅費を使うことができなかった.いずれもCOVID-19の流行が収まれば旅費は令和3年度のセミナーに使う予定である.
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