研究課題/領域番号 |
20K03796
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
島田 悠彦 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 准教授 (20751192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非ユニタリ共形場理論 / 非相対論的共形場理論 / ブートストラップ / 一般化超幾何関数 / 高分子とパーコレーション / 非平衡相転移の普遍性 / 2次元ユニタリ系のミニマル系列 / Schrodinger代数 |
研究実績の概要 |
相転移における臨界指数の普遍性は、多体系の理解において本質的役割を担ってきた。特に2次元ユニタリ系の共形場理論(CFT)は、4点関数のブートストラップという問題を解くことによって普遍性クラスの厳密なカタログを与えることが知られている。近年はユニタリ性をもつ3次元CFTにおいてIsing模型の精密な臨界指数を決定するなど、数値的なブートストラップが成功を収めている。本研究ではこのユニタリ性の条件を外したCFTにおいて有用な定量的結果を得ることを目的としている。 当初は高分子やパーコレーション等の2次元非ユニタリCFTを切り口に研究を進める計画であったが、さらにCFTを時空異方的なスケール不変性をもつ場合に拡張した非平衡相転移の普遍性について着実な進展が得られた。このような系の先行研究ではSchrodinger代数をもつ非相対論的CFTについて3点関数の形までが知られていたが、我々は時空1+1次元の場合に4点関数の一径数族を得た。今年度はそれをさらに明示的な形にすることで、Schrodinger不変な3つの複比を変数に持つ一般化超幾何関数による4点関数の表示を得ることができた。特に時空図で1直線に並ぶ4点の場合は、時間の複比のみに依存する4階超幾何微分方程式の解に帰着した。この一係数族は無限個の特別な点において簡単化するため、2次元ユニタリ系のミニマル系列と類似の構造をもつ。通常のLorentz不変なCFTではこのような超幾何微分方程式の解(共形ブロック)の接続公式がCFTデータを定めるブートストラップにおいて中心となるため、今後は複比における解析接続が重要である。この解析接続においては漸近展開が現れるので、収束域の重なりを利用する従来のブートストラップの概念を拡張することも念頭に研究を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元非ユニタリ系として高分子やパーコレーションを扱い、ユニタリ性の破れを定量的に評価してブートストラップに有効な情報を引き出すという当初のアプローチとは全く別に、非相対論的共形場理論において厳密な4点関数の一係数族の具体的な表示が得られるという予期せぬ発展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2次元非ユニタリCFTについて、高分子やパーコレーションにおけるユニタリ性を評価する。とくに階層的なユニタリ性の破れのスケーリング次元に関する指数関数的な減衰について定量的な評価を進める。ブートストラップに関する数値計算も並行して進める。非平衡相転移については、すでに得られた解の一係数族が自由ボソン系・フェルミオン系・Glauber模型のような順でミニマル系列を含んでいる可能性を示唆しているためさらに研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年以上前から計画されていた国際会議の招待講演や滞在型ワークショップがオンライン開催となり海外旅費を使わなかった。今後は、当初のように海外旅費として使用することを念頭に置き、研究推進に役立てる。
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