研究課題/領域番号 |
20K03799
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
瓜生 誠司 岩手大学, 理工学部, 准教授 (80342757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グラフェンナノリボン / プラズモン |
研究実績の概要 |
本研究の課題の1つであるグラフェンナノリボンのプラズモンを用いた分子分光の理論の研究を行った。先ず、ナノリボン上に1つの分子が吸着した場合にナノリボンのプラズモンが受ける影響を、光吸収スペクトルとナノリボン上の電場分布を解析することにより明らかにした。さらに、この結果に基づき、ナノリボン上に2つの分子が吸着した場合のプラズモンを介した分子間の相互作用を調べた。 ナノリボン上に1つの分子が吸着する場合の結果は次のとおりである。光吸収スペクトルにおける分子吸着の影響は、分子とプラズモン両者の共鳴エネルギーが一致する場合、プラズモンによる吸収ピークにおけるディップとして現れる。両者の共鳴エネルギーが異なる場合は、分子吸着はプラズモンによる吸収ピークの裾の微小なピークとして現れる。前者の場合、ナノリボン上の電場分布は、プラズモンにより増大した電場が分子の反電場のため分子の周りで極端に減少したものになる。後者の場合、電場分布は元の分布に比べて分子の周りで増大する。これらの電場分布への分子の影響は過渡的な領域を伴うため、分子とプラズモンの共鳴エネルギーの相対的関係に依らず、ナノリボン上の電場は局所的には分子によって増大し得る。 ナノリボン上に2つの分子が吸着する場合、定性的には、1つの分子の吸着により電場が増大する位置に2つ目の分子が吸着すると、光吸収スペクトルピークにおける分子吸着の影響は非線形的に増大し得る。このことは、プラズモンを介した分子間相互作用により分子の光吸収が有効的に増大し得ることを示す。さらに、この機構を利用することにより、より多くの分子の吸着が光吸収スペクトルにおけるより強い非線形的効果として表れ得ることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題の1つであるグラフェンナノリボンのプラズモンを用いた分子分光の理論として、当初予想していたプラズモンを介した分子間相互作用による分子の集団励起の基礎理論をおおよそ構築した。プラズモンを介した2つの分子間の相互作用機構が明らかになり、その機構から多数の分子の集団的励起の可能性が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
グラフェンナノリボンのプラズモンを用いた分子分光の理論において、多数の分子の集団的励起を示し、この課題を完遂する。次に、金属微粒子群を用いた遷移金属ダイカルコゲナイドの光吸収の増強の理論の研究を行う。遷移金属ダイカルコゲナイド単体の光吸収特性を明らかにする。さらに、グラフェンナノリボンのプラズモンを用いた分子分光の理論で使用した数値実験コードを拡張し、金属微粒子群を用いた遷移金属ダイカルコゲナイドの光吸収の増強法を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによる国際会議のオンライン化等により主に旅費の支出が抑制された。これによる次年度使用額は、研究の過程で明らかになったより大規模な計算の必要性に対応するための計算機購入等に使用する予定である。
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