研究課題
光キャリア-エンベロープ位相(CEP)を精密に制御した高強度単一サイクル近赤外光(光電磁場の振動周期~6フェムト秒)を用いて強相関電子系の高次高調波発生を調べた。1) 有機超伝導体κ-(ET)2Cu[N(CN)2]Brにおいて、対称心を有するにもかかわらず第二高調波が発生することを見出した。高周波の光強電場が駆動する極短時間の無散乱電流が第二高調波発生(SHG)の起源と考えられること、SHGが超伝導ゆらぎによって増強されることなどが明らかとなった。高周波光強電場を用いたペタヘルツ超伝導デバイスへの応用が期待できる。2) 超広帯域スペクトルの精密測定技術を開発した。複屈折結晶を利用した可視~紫外フーリエ分光と回折格子型分光器を組み合わせることで、ダイナミックレンジの拡大、波長分解能の向上、超広帯域波長フィルタリングなどの要素技術を確立し、高調波スペクトル測定の精度を飛躍的に向上することに成功した。この技術は高次高調波測定に限らず可視・赤外・ラマン分光などの広範なスペクトル測定に適用可能であり、従来の分光技術の精度を大きく改善できる。3) 開発した精密測定技術を用いて銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7-δの第三および第五高調波発生を観測した。第五高調波が、この物質の特徴であるCuO2面とCuO鎖におけるキャリアのフェムト~アト秒ダイナミクスを反映する可能性が見出された。今後のさらに発展的な研究によって、超伝導状態における微視的なキャリアダイナミクスの解明も期待できる。4) 電子強誘電体α-(ET)2I3を対象に光励起-SHGプローブ実験を行った。電荷秩序の光融解に伴って、第二高調波が500フェムト秒以内にほぼ完全に消失することが明らかとなった。電子強誘電体を利用したフェムト秒非線形光スイッチングへの応用が期待できる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/08/press20220824-02-light.html