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2020 年度 実施状況報告書

超伝導微粒子の空間捕捉を利用した物性研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K03819
研究機関富山大学

研究代表者

森脇 喜紀  富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (90270470)

研究分担者 小林 かおり  富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (80397166)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード超伝導 / 微粒子 / レーザーアブレーション / Mie散乱 / レニウム
研究実績の概要

レーザーアブレーションにより超流動ヘリウム中にレニウム(Re)微粒子を生成し、超伝導状態の微粒子のみを四重極磁場により捕捉する。不要な微粒子はレーザー加熱により脱落させ微粒子1個のみを捕捉する。捕捉された単独の微粒子によるレーザー光の散乱光強度の角分布を3つのレーザー波長について調べ,その測定結果はReの常温での複素屈折率を用いてMie散乱理論により説明でき,その結果微粒子のサイズを光学的に求めることができた。Reはバルクでは超伝導転移温度が1.7Kであるが,我々が生成した微粒子では超伝導転移温度が液体ヘリウムの1気圧の蒸気圧下での沸点4.2Kよりも高いため,常伝導転移により微粒子を落下させて微粒子を回収することが困難であったが,比較的大きい微粒子について回収して実験装置から取り出し,走査型顕微鏡で観察できるようになった。その結果,電子顕微鏡像による微粒子径の測定とMie散乱による測長では,数%の範囲で一致していることが分かった。また,有限要素法による数値計算により,微粒子の真球からのゆがみがMie散乱角度分布に及ぼす影響について調べ,微粒子サイズ測定への影響を見積もった。
また,数十気圧程度まで加圧できる液体ヘリウムセルを用いて,微粒子捕捉の実験を始めた。アブレーションレーザーのパワーや圧力などを調整して微粒子捕捉実験に取り組んでいる。また,超伝導ギャップをミリ波を用いて測定するために,クライオスタットのガラス窓からミリ波を内部に導入するために,窓ミリ波のガラス透過率を測定した。今後,窓材を通じてミリ波を導入する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

レニウム微粒子についてMie散乱を測定することにより微粒子のサイズを捕捉した状態で調べることが可能となった。今度,超伝導転移温度のサイズ依存性を議論するためのサイズ測定の手法が得られた。また,微粒子の超伝導ギャップをミリ波の吸収により直接測定するための,予備実験が進んだ。以上のことより,順調に進んでいると判断した。

今後の研究の推進方策

現在の実験装置での到達温度の上限は,液体ヘリウムの1気圧下での沸点である4.2Kである。このため,レニウム微粒子の転移温度は現状では4.2K以上としかいえていない。この上限温度を高めRe微粒子の転移温度を確定させるために次の方法手法を開発する:
ヘリウム加圧セルの利用 液体ヘリウム中で生成した微粒子を空間捕捉した状態で,液体ヘリウムから気体ヘリウムに相転移させる場合,液面が微粒子を通過する際の表面張力により微粒子が捕捉から外れる。そこで,液体ヘリウムを加圧して超臨界点(5.2K, 2.26atm)付近を実現させる。微粒子の生成方法,トラップ方法,セルの構造について検討し,空間捕捉の実現を探る。加圧セルのサイズによっては,新たにガラス製のクライオスタットの導入を検討する。
気相中での空間捕捉の検討 上記の問題は液体ヘリウムを用いていることに起因している。ヘリウムガス中での微粒子生成と空間捕捉を検討し,その実現を探る。
これらの手法を開発することにより,Re微粒子の超伝導転移温度を確定させる。
空間捕捉された微粒子の超伝導ギャップをミリ波の吸収させることによる直接測定を行う手法を開発する。ミリ波を吸収し常伝導状態となった微粒子は捕捉から脱離するため,捕捉/脱離の測定で遷移を調べる。微粒子の捕捉領域にミリ波を導く手法として,光学窓を透過させる方法とクライオスタットの上部から導波管を通じて導く方法等を検討する。インジウムやスズなどの微粒子を対象として,その超伝導ギャップの直接測定へと進めていく。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19対応で実験的な研究の開始時期が遅くなったため,次年度にミリ波の導入および加圧セルの改造等の実験装置の構築を行う予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 液体He中でレーザーアブレーションによって生成された超伝導微粒子の磁気トラップXIII2021

    • 著者名/発表者名
      近藤大聖,佐々木照太,髙宗雅人,熊倉光孝,芦田昌明,森脇喜紀
    • 学会等名
      日本物理学会2021年次大会
  • [学会発表] 液体He中でレーザーアブレーションによって生成された超伝導微粒子の磁気トラップXI2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木照太, 直井惇, 髙宗雅人, 近藤大聖, 熊倉光孝, 芦田昌明, 森脇喜紀
    • 学会等名
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [学会発表] 液体He中でレーザーアブレーションによって生成された超伝導微粒子の磁気トラップXII2020

    • 著者名/発表者名
      近藤大聖,佐々木照太,髙宗雅人,直井惇,熊倉光孝,芦田昌明,森脇喜紀
    • 学会等名
      日本物理学会北陸支部定例学術講演会

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公開日: 2021-12-27  

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