研究課題/領域番号 |
20K03824
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
香村 芳樹 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, チームリーダー (30270599)
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研究分担者 |
澤田 桂 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (40462692)
大和田 謙二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, グループリーダー(定常) (60343935)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | X線の空間位相制御 / 光学タム状態 / 分散関係のバンドギャップ制御 / X線動力学回折 / 積層欠陥 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、完全結晶の奥行き方向の周期性の破れを生じさせ、ブラッグ反射で相互作用するX線の奥行き分布に欠陥領域への局在を生じさせ、いわゆる光学エッジ状態を観察することを目標とし研究を行う。周期媒体の分散関係にはギャップが生じ二つの伝搬モードがトポロジー的に隔てられているが、完全結晶の奥行き方向の周期性の破れは、ギャップを消滅させ光学エッジ状態を生じる効果を与えるもので、マイクロ波領域で実測された例がある。X線を用いれば、積層欠陥の一原子層レベルの厚さに絞られた、世界最小幅の導波路の実現が可能と考えられる。このX線光学タム状態は積層欠陥周辺の結晶格子面の分布に敏感に影響を受ける。格子面間隔で規格化した格子面の位置ズレは、X線波面にとって、位相因子として寄与するので、新しい原子レベルでの位相敏感な高感度センサーの開発に役立つと期待される。この実験を実現するために、2020年度では、C(111)面に対する積層欠陥を一つ含有し、欠陥以外は結晶性が極めて高いダイヤモンド完全結晶試料を入手した。2021年度から、このダイヤモンド完全結晶に、平面波状のX線波面を照射して、X線光学エッジ状態を生成する実験を行うための準備が整った。実験結果が光学エッジ状態で予想されるものと一致することを示すための、X線動力学的回折理論を用いたシミュレーション計算コードを作成した。実験結果との対比で論文化する準備が順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、完全結晶の奥行き方向の周期性の破れを生じさせ、ブラッグ反射で相互作用するX線の奥行き分布に欠陥領域への局在を生じさせ、いわゆる光学エッジ状態を観察することを目標とし研究を行う。周期媒体の分散関係にはギャップが生じ二つの伝搬モードがトポロジー的に隔てられているが、完全結晶の奥行き方向の周期性の破れは、ギャップを消滅させ光学エッジ状態を生じる効果を与えるもので、マイクロ波領域で実測された例がある。X線を用いれば、積層欠陥の一原子層レベルの厚さに絞られた、世界最小幅の導波路の実現が可能と考えられる。 光学エッジ状態の生成は、ブラッグ反射角で欠陥以外の領域でブラッグ反射が起きる際に、(i)欠陥面に限定された狭い領域で導波現象をおこし結晶を透過すること、および、(ii)結晶に対するX線の入射角を変え反射率を測定するロッキング・カーブ測定でブラッグ反射のダーウイン幅内で反射率が、狭い角度領域で低減する様子を観察し、確認する。(i)と(ii)の実験結果が光学エッジ状態で予想されるものと一致することを示すための、X線動力学的回折理論を用いたシミュレーション計算コードを作成した。実験結果との対比で論文化する準備が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、完全結晶の奥行き方向の周期性の破れを生じさせ、ブラッグ反射で相互作用するX線の奥行き分布に欠陥領域への局在を生じさせ、いわゆる光学エッジ状態を観察することを目標とし研究を行う。周期媒体の分散関係にはギャップが生じ二つの伝搬モードがトポロジー的に隔てられているが、完全結晶の奥行き方向の周期性の破れは、ギャップを消滅させ光学エッジ状態を生じる効果を与えるものであり、マイクロ波領域で実測された例がある。X線を用いることで、原子レベルの領域への局在が観察できれば世界初の業績となる。 まず、2020年度に入手した、C(111)面に対する積層欠陥を一つ含有し欠陥以外は結晶性が極めて高いダイヤモンド完全結晶試料に対し、平面波状のX線波面を照射して、X線光学エッジ状態を生成する実験を行う。X線光学エッジ状態の生成は、ブラッグ反射角で欠陥以外の領域でブラッグ反射が起きる際に、(i)欠陥面に限定された狭い領域で導波現象をおこし結晶を透過すること、および、(ii)結晶に対するX線の入射角を変え反射率を測定するロッキング・カーブ測定でブラッグ反射のダーウイン幅内で反射率がある角度で低減する様子を観察し、確認する。(i)と(ii)の実験結果が光学エッジ状態で予想されるものと一致することを示すため、X線動力学的回折理論を用いたシミュレーション計算コードを完成させ、実験結果と対比させた議論を展開し、論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画から実験の実施方法が変更になったことと、研究成果報告を行う学会がオンライン形式となったため、出張費用が無料となったことによって、次年度使用額が生じた。次年度の学会での研究成果報告もオンライン形式となる可能性がある。次年度の研究においては、実験結果がシミュレーションの結果と合致することを示す必要があり、次年度使用額を、このシミュレーションを行うソフトウェアの保守契約を結ぶために利用する予定である。
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