研究課題/領域番号 |
20K03826
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
御領 潤 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70365013)
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研究分担者 |
植木 輝 北海道大学, 理学研究院, 研究院研究員 (90828469)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カイラル超伝導 / トポロジー / 境界状態 / 超伝導スピントロニクス |
研究実績の概要 |
空間反転対称性を局所的に破る超伝導体 SrPtAs はカイラルd-波と呼ばれるペアリングが実現している可能性が高い. このペアリングはカイラル境界状態をトポロジカルに保護する. この境界状態は自発電流および自発スピン流を運ぶ. そのためスピンの自発分極が発生する.この機構について, これまで数値的手法による研究を行ってきたが, 現在は解析的手法による記述を模索中である. これを成功させることにより,現象のより系統的な理解とコントロール, そして超伝導新物質探索の新たな指針が得られることが期待される.また, 最近発見された反転対称性を破る超伝導体 BaPtSb の研究を行っている.この系ではまだ予備段階ではあるが, ミューオンスピン緩和実験によって転移温度以下で内部自発磁場が観測され, 超伝導状態では時間反転対称性が自発的に破れていることになる. 我々はこの物質のペアリング状態を群論的に分類し,その中から時間反転対称性を破り, かつ, フェルミ面の構造との整合性がよく安定化されやすい状態としてカイラルp-波状態が候補となることとを指摘した. この結果を2020年日本物理学会秋の分科会,および2021年日本物理学会年会において発表した. また, カイラル境界状態と空間反転対称性の破れを起因とする反対称スピン軌道相互作用の効果が境界状態にどのような影響を及ぼしうるか,SrPtAsと同様にスピン分極を引き起こすのか, また,引き起こされた場合 SrPtAs とどのような違いが現れ得るか議論する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学院生との共同研究により計算は概ね計画通りに進んでいる. 論文の公表までには至っていないが, 述べ4回の学会発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の目標として, 境界状態とスピン分極に関するこれまでの成果を学術論文として公表することが喫緊の課題である. 計画を変更する予定はなく,今後は量子渦の芯において生じ得るスピン分極についても議論を広げていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症のため出張の機会が激減し,旅費の支出が予定通り行われなかったため.
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