研究課題
従来の磁性体では電子スピンに起因する双極子的な磁気モーメントが秩序することで巨視的な磁性が発生する。最近、四つあるいはそれ以上の極から構成される多重極モーメントに基づいた新しい状態(量子液晶状態)が生じる事が指摘され、従来の磁性体には見られない性質が生じる可能性が期待されている。本研究は、S=1スピンダイマー化合物Cs3V2Cl9および関連化合物を用いてスピンネマティック状態を実験的に検証することを目的としていた。作成したCs3V2Cl9単結晶の磁化率、磁化、比熱、強磁場磁化といった巨視的物性ならびに核磁気共鳴といった微視的情報を与える測定手段を用いて本化合物の磁気的性質をある程度明らかにすることができた。本化合物には温度に対して逐次相転移が起こる。低温での相転移は従来型の磁気相転移と考えられる。一方、高温で生じる相転移はスピンネマティック状態に対して期待されるような振る舞いが見られた。スピンフラストレートした系におけるスピンネマティック状態の生起を研究するために、銅スピン (S=1/2)が磁性を担う磁性体である擬孔雀石Cu5(PO4)2(OH)4およびその関連物質の磁気的性質を調べた。本化合物は層状化合物で、層内に存在する銅スピンが三角形と五角形からなる非対称なフラストレートスピン格子を形成する。強磁場測定を行ったところ多段の磁化プラトーを見いだし、量子状態との関連を検討した。実験課題遂行に必要な、低温における磁気共鳴装置開発にも携わった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件)
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