研究課題/領域番号 |
20K03835
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山影 相 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (90750290)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジカル超伝導 / マヨラナ粒子 / 多極子 / 対称性 |
研究実績の概要 |
トポロジカル超伝導体は,表面における低エネルギー励起がマヨラナ粒子として振る舞う系である.これに起因して非可換統計などの非自明な量子現象が生じると期待されている.しかし,実験的にトポロジカル超伝導体を同定することは極めて難しく,その候補物質はほとんど見つかっていない.マヨラナ粒子自体の検出も,その電荷中性という性質のために難しい.新しい観点からマヨラナ粒子の検出法を考え直す必要がある. 本研究では,トポロジカル超伝導体の表面に創発するマヨラナ粒子がもつ電磁気的な自由度を明らかにする.これはマヨラナ粒子の検出法・制御法を考察する基礎指針であり,さらに,新奇な量子現象を予言するための基盤となるものである. 本年度は,時間反転対称性を保存する2対(2クラマース対)のマヨラナ粒子が持ちうる電気的な自由度(電気多極子)を分類した.本研究により,結晶(表面)の対称性(壁紙群)と超伝導状態の対称性(既約表現)を与えると,マヨラナ粒子がもつ電磁自由度(多極子・既約表現)が直ちに分かる.これは物質の詳細によらない普遍的な結論であり,汎く適用することができる. 具体例として,超伝導Sr3SnOの表面に存在するマヨラナ粒子がもつ電気多極子を決定することができ,それと結合する歪の対称性も明らかになった.この結果は,外部から歪を加えることで2対のマヨラナ粒子の存在を検出できる可能性を示唆している.また,磁場とは異なり,歪はマイスナー効果を受けないので,マヨラナ粒子の運動を制御するのにも歪が有効である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの成果により,時間反転対称性がある場合の超伝導体表面のマヨラナ粒子の電磁自由度の基礎理論は完成したと言える.本研究計画の主要な部分は達成した.これを基盤として,更に豊かな物理現象の解明へ踏み出すことができる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向性として2つある.基礎的な面としては,時間反転対称性が無い場合のマヨラナ粒子の電磁自由度を系統的に分類することである.あるいは応用的な面としては,これまでに得られた結果を用いて,時間反転対称性があるマヨラナ粒子の応答現象を具体的に明らかにすることである.後者については現在進行中であり,マヨラナ粒子の具体的な模型を構築することはできている.これに基づいて線形応答理論により,マヨラナ粒子がもつ物理量の輸送現象を詳細に明らかにすることができると環がている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために旅費が不要になり次年度使用額が生じた.翌年度にはこれを計算機の購入費用と共同利用計算機の使用費に充てる.
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