研究課題/領域番号 |
20K03838
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
住山 昭彦 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (30226609)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 重い電子系超伝導体 / 反強磁性 / 磁場侵入長 / 自発磁化 / ジョセフソン効果 |
研究実績の概要 |
本年度は、反強磁性と超伝導が共存する物質としてUPt3とCePt3Siを対象とし、精密磁化測定とジョセフソン効果の測定を行った。UPt3については、前年度に引き続き圧力セル内で磁化測定を行い、反強磁性が消失する臨界圧力~0.4GPa付近で細かく圧力を変化させて測定することで、相転移に伴う磁場侵入長の振る舞いの変化の詳細を調べた。これまでの研究で、その増加率について、臨界圧力以上では臨界圧力以下に比べ2倍程度増大することが観察されていたが、本年度の研究で、0.4GPa以下ではほぼ一定の増加率、0.75GPa以上ではそれに比べて2倍程度の増加率が観察され、0.4GPaから0.75Paの間の圧力領域では、温度降下とともに高圧相の特性から低圧相の特性へと振る舞いの変化が見られることがわかった。 一方、UPt3上のジョセフソン素子の研究では、3つの接合を作成して、1つの接合でジョセフソン効果が観測されたが、依然として所望の特性には達しなかった。一方、ジョセフソン効果が観測されなかった接合で、UPt3表面に超伝導性が劣化した層の存在を示唆する結果が得られたので、良質の接合を得るために、以前に接合を作成した結晶表面の再利用ではなく、未使用の単結晶表面で作成を行う必要があることがわかった。 また、CePt3Siについては、単結晶試料を高圧セル内に導入して、自発磁化の圧力依存性の研究を開始した。これまでの研究で、自発磁化の発生がバルクの性質ではなく、表面、結晶欠陥、双晶境界等で生じている可能性が示唆されていたが、圧力印加によって、自発磁化の大きさに顕著な変化が見られることがわかった。本年度の印加圧力は、まだ反強磁性が消失する臨界圧力~0.65GPaに達していないので、この変化は反強磁性の消失によるものではなく、圧力印加により結晶構造の乱れの状況に何らかの変化が生じたためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、磁化測定を1K以下の極低温下で行う必要であるため、稀釈冷凍機を使用しているが、年度の後半に、冷却の要である循環ガス系の真空部品にひび割れが生じて、かなりの量のヘリウム3/ヘリウム4混合ガスの遺漏が生じた。幸い、非常に高価で稀少なヘリウム3ガスについても備蓄があったため、ガスの追加で対処することができたが、ヘリウム3/ヘリウム4の混合比に変化が生じたため、その調整のための実験が必要となり、年度中の実験回数に予定外の不足が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、UPt3については、本年度の研究を通じて、臨界圧力付近で高圧相から低圧相への移り変わりが観測される圧力領域が見出されたので、引き続き同じ圧力セルでこの圧力領域での振る舞いを調べた上で、磁場侵入長の圧力依存性の実験を終え、論文発表を目指す。また、この測定で使用していた単結晶はこれまで他の実験には使用しておらず、未使用の表面を有しているので、良質のジョセフソン接合形成が期待できる。そこで、圧力セルから取り出し次第、直ちに接合を作成し、ジョセフソン効果の研究を行う。所望の特性を示すジョセフソン接合が得られれば、圧力セルに導入し、圧力依存性の研究を開始する。 一方、CePt3Siについては、引き続き圧力セルに導入した状態で、自発磁化の圧力依存性の測定を行う。本年度はまだ臨界圧力には達していなかったので、臨界圧力以上まで測定を行い、反強磁性が消失したことにより現れる自発磁化の変化の有無を確認して、結果の論文発表を目指す。また、自発磁化の発生がバルクではなく、結晶欠陥、双晶境界等局所的に生じている場合、微小なジョセフソン接合を作成すれば、自発磁化の影響を受けず、時間反転対称性の破れていない磁場特性が得られる可能性があるので、微小接合のジョセフソン効果の研究も平行して行う。
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