研究課題
重い電子系のCePt3Siでは、転移温度0.45Kの超伝導と転移温度2.2Kの反強磁性が共存し、様々な非従来型超伝導の振る舞いを示すが、我々は超伝導の時間反転対称性の破れを示唆する自発磁化を検出していた。本研究では、反強磁性が消失する0.65GPa以上の圧力を印加して自発磁化を測定することにより、自発磁化の発生に反強磁性は関与していないことを確認した。一方、時間反転対称性の破れた超伝導は、既にジョセフソン効果の磁場特性の異常でも検出されていたが、接合面積の小さな素子で検証を行ったところ、磁場特性の異常が消失したので、自発磁化は試料全体ではなく表面、双晶界面等で局所的に発生しているという我々の推測を支持する結果が得られた。以上の結果は、最近多くの超伝導体でミュオンスピン共鳴により検出されている自発磁場について、その起源の解明に寄与すると期待される。また、スピン3重項電子対からなる重い電子系超伝導体のUPt3では、温度、磁場、圧力に依存して3つの異なる超伝導相が現れるが、超伝導と共存している反強磁性が消失する0.4GPa以上の圧力下で現れる超伝導相の詳細については、まだ明らかになっていない。本研究では、1.0GPa付近まで圧力を印加してc軸に垂直な面内の磁場侵入長λの測定を行い、反強磁性の有無に依らず低温でのλの温度依存性は温度に比例することから、秩序変数がc軸に垂直な面内で線上ノードを持つことを確認した。一方、反強磁性の消失によりλの温度係数が増大することから、絶対零度でのλが増大した可能性があることを見出した。この結果は、ジョセフソン効果の磁場依存性から得られたc軸方向のλについて、反強磁性の消失による減少が見られたことと対照的である。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 91 ページ: 074713
10.7566/JPSJ.91.074713