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2022 年度 実施状況報告書

クラスター拡張多極子秩序の微視的検証と開拓

研究課題

研究課題/領域番号 20K03845
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

神戸 振作  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (40224886)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード隠れた秩序 / 重い電子系 / NQR
研究実績の概要

拡張多極子秩序は多原子や多軌道で構成される新しいタイプの電子系秩序である。拡張多極子秩序が実証されれば、多極子秩序の探索領域と多様な磁気秩序の可能性が飛躍的に広がり、電子物性研究に新たな領域が開かれる。拡張多極子秩序状態は強相関系特有の新しい状態であり、巨大異常ホール効果発現の指標にもなると期待され、スピントロニクス等への応用でも注目されている。拡張多極子秩序では非局所的な秩序が現れているため、磁性イオン自身の局所的情報だけではその秩序を検証できない。強相関 5f 電子系では、電子相関、スピン軌道相互作用、局在/遍歴競合が複合してもたらす多様な新奇電子状態を示す化合物が次々と発見されている。これらの新奇状態の解明は新しい物理の創出に繋がるため、大きな注目を集めている。そのなかでも URu2Si2 は特異な例である。この化合物は、異方的超伝導体であると同時に17Kで或る秩序相に相転移する。しかし、多くの測定手法を用いた膨大な実験的研究にもかかわらず、未だにこの秩序相 の秩序パラメーターが決定できず、”隠れた秩序 ”と呼ばれている。その解明のためには新しい物理モデルが不可欠であり、凝縮系物理学の重要課題のなかでも最も挑戦的なものとなっている。しかし、その同定は二十年来なされておらず、固体物理学の難問になっている。そこで今年度は一軸圧をかけて対称性を低下させて、それによってあらわれるより低次の多極子秩序を同定することにより、元の隠れた秩序状態を同定することを試みた。具体的には圧力セルを用いて、純良のURu2Si2単結晶試料で[100]方向に一軸圧をかけて、RuサイトのNQR測定をゼロ磁場で行なった。隠れた秩序転移温度が一軸圧下で上昇することを見出した。また内部磁場は生じないことも明らかにした。これにより隠れた秩序状態の空間群は絞られることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年の半ばまでは、コロナ禍の影響を受けて実験に必要な物品の納入に滞りが発生して遅れが生じていたものの、2023年においては物品の納入状況も改善され、当初計画に近い形で実験を行うことができたため、おおむね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

2023年度もURu2Si2に一軸圧をかけて対称性を低下させて、それによってあらわれるより低次の多極子秩序を同定することにより、元の隠れた秩序状態を同定することを試みる。具体的には圧力セルを用いて、純良のURu2Si2単結晶試料で[100]方向に一軸圧をかけて、RuサイトのNQR測定をゼロ磁場で行なう。もし必要であれば一軸圧下での磁場下Si-NMR実験を遂行する。

次年度使用額が生じた理由

2022年度においては、コロナ禍の影響により実験に必要な物品の年度内納入が不透明な状況だったこと受け、購入計画を見直し、状況が改善するであろう次年度に発注することとした。これにより物品購入に係る費用が次年度使用額として生じることとなった。次年度使用額は実験に係る物品購入費用として使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] CEA/Grenoble(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      CEA/Grenoble
  • [国際共同研究] Charles University(チェコ)

    • 国名
      チェコ
    • 外国機関名
      Charles University
  • [雑誌論文] Ferromagnetic Crossover within the Ferromagnetic Order of U7Te122023

    • 著者名/発表者名
      Petr Opletal , Hironori Sakai , Yoshinori Haga , Yoshifumi Tokiwa , Etsuji Yamamoto , Shinsaku Kambe , Yo Tokunaga
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 92 ページ: 034704-1-6

    • DOI

      10.7566/jpsj.92.034704

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nested antiferromagnetic spin fluctuations and non-Fermi-liquid behavior in electron-doped CeCoNiIn52023

    • 著者名/発表者名
      H. Sakai , Y. Tokunaga , S. Kambe , J.-X. Zhu , F. Ronning , J. D. Thompson , H. Kotegawa , H. Tou , K. Suzuki , Y. Oshima , M. Yokoyama
    • 雑誌名

      physical Review B

      巻: 106 ページ: 235152-1-8

    • DOI

      10.1103/physrevb.106.2351

    • 査読あり
  • [学会発表] 一軸圧下Ru-NQR によるURu2Si2の研究2022

    • 著者名/発表者名
      神戸振作、酒井宏典、芳賀芳範、徳永陽、金城克樹、北川俊作、石田憲二、 播磨尚朝
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] Restriction on Hidden order parameter from Local symmetry at Ru site under uni-axial stress in URu2Si22022

    • 著者名/発表者名
      S. Kambe
    • 学会等名
      Materials Research Society
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Restriction on Hidden order parameter from Local symmetry at Ru site under uni-axial stress in URu2Si22022

    • 著者名/発表者名
      S. Kambe
    • 学会等名
      29th International conference on Low Temperature Physics

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公開日: 2023-12-25  

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