ある温度以下で電気抵抗が消失する超伝導現象は、物性物理学の中心的テーマとして広く研究されている。特に1986年に発見された銅酸化物高温超伝導体は従来のものをはるかに超える高い転移温度を持ち、基礎・応用の両面で革命的な進展をもたらした。本研究では銅酸化物高温超伝導体の発現機構においてこれまで見逃されがちだった電子の軌道自由度を適切に取り込んだ理論モデルを大規模な数値計算によって解析し、未解明だった複数の事象を説明することに成功した。この成果は銅酸化物高温超伝導体の新展開につながるとともに、新たな超伝導物質の創製や強相関電子系全般のさらなる理解にもつながると期待される。
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