研究課題/領域番号 |
20K03848
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北 孝文 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20186224)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ボーズ・アインシュタイン凝縮 / ワード・高橋恒等式 / 超流動ボーズ液体論 |
研究実績の概要 |
有限温度におけるボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)相の自己無撞着摂動展開を新たに構築した。この摂動展開は、ゴールドストーンの定理、粒子数・運動量・エネルギー保存則、およびバーテックス間の恒等式を自動的に満たすという利点がある。この定式化を用いて、1粒子グリーン関数と2粒子グリーン関数の関係を調べた。両者は極を共有すること、すなわち、2粒子励起に1粒子励起が含まれていることが示された。これは、ガボレとノジエールが絶対零度で示した結果の有限温度への拡張になっている。さらに、この定式化を一様系に適用し、自己エネルギーと相互作用バーテックスの間の関係式である「ワード・高橋恒等式」を導いた。BEC相におけるワード・高橋恒等式は、これまで、ガボレとノジエールによる、絶対零度の摂動論的な導出があるのみであった。しかし、その導出に際しては、赤外発散を除くため、励起に仮想的なギャップを入れてそれのゼロ極限をとるという手法が用いられた。その妥当性は明らかではなかった。また、彼らの表式はクリーン関数のみで与えられているが、その結果の検証もなされてこなかった。今回導いたWT恒等式は、ガボレとノジエールの表式とは異なり、グリーン関数と凝縮波動関数で記述されている。その結果は、いくつかの厳密な恒等式を満たすことも示された。また、ガボレとノジエールの結論に反して、周波数と波数のどちらを先にゼロと置くかでバーテックスの表式が異なってくることも明らかになった。この結果により、ガボレとノジエールによって否定された「2粒子励起が集団励起を含む」ことも可能であることがわかった。これらの成果は、BEC相を、ランダウのフェルミ液体論と同様の扱いで記述すること、すなわち、「超流動ボーズ液体論」の構築を可能にする。また、繰り込み群によるBEC相の研究においても、有効相互作用を用いて議論することができることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボーズ・アインシュタイン凝縮相を、低エネルギー有効バーテックスを用いて記述できること、すなわち、「超流動ボーズ液体論」の構築が可能であることが明らかになった。また、上記の研究成果と並行して、BEC相を繰り込み群の手法で微視的・数値的に理解する研究も着実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究成果に基づいて、BEC相に対する繰り込み群の研究に、有効相互作用の手法を取り込む。そして、超流動ヘリウム4の微視的理論を構築してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、国内・国際学会がキャンセルされ、旅費の使用に大きな見込み違いが生じたため。
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