研究課題/領域番号 |
20K03851
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 悠晴 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90751115)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スピン三重項超伝導 / 非フェルミ液体状態 / アクチナイド物性 |
研究実績の概要 |
強相関ウラン化合物は、非従来型超伝導や非フェルミ液体異常金属、新奇量子相転移などの多彩な量子物性を示す。ウラン系超伝導体は、超伝導と磁性の共存などの異常な磁気応答やエキゾチックな超伝導対称性を示し、さらには『スピン三重項超伝導』候補が多いという特徴がある。UBe13と置換系U1-xThxBe13を始め、強磁性超伝導体UGe2・UCoGe・URhGe、昨年発見された新奇超伝導体UTe2はスピン三重項超伝導の有力候補である。 今年度は新奇スピン三重項超伝導体UTe2の極低温磁化・比熱・熱膨張・磁歪測定を重点的に行ない、また試料依存性も調べた。極低温比熱測定からはUTe2の超伝導ギャップを調べ、磁化容易軸であるa軸の方向にポイントノードがある可能性が高いことが明らかになった。さらに超伝導相内において異常な角度依存性が観測され、UTe2において異常な磁気揺らぎがある可能性があり、その起源が興味深い。さらに、UTe2の極低温磁化測定を磁化容易軸(H//a)と困難軸(H//b)に対して、希釈冷凍機温度まで集中的に行ない、特に磁化困難軸H//bにおいてリエントラント超伝導と関連する奇異な超伝導反磁性磁化の増大が観測された。試料依存性も調べ、観測された異常なUTe2の磁化過程が本質的なものであることが明らかになった。 またUBe13の超伝導・フェルミ面電子状態に関する理解を深めるため、希土類化合物RBe13(R:希土類)も作成し、純良単結晶を得ることに成功した。現在それらの試料評価を行なっており、量子振動測定実験へと進みたい。 さらにZrNiAl型準カゴメ構造をもつURhSnの純良単結晶における基礎物性測定(電気抵抗・磁化・比熱・熱膨張)及び強磁場パルス磁化測定を行ない、低温17Kでの強磁性相に加えて、磁場で強化される新奇相(54 K)を持っていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
無酸素銅材料を用いた小型キャパシタンス式熱膨張・磁歪セルの開発に成功したが、現在熱膨張測定用プローブの完成まで至っていない。また、微細加工についても新型コロナウイルス感染症予防による出勤制限や、暴風による管理区域排気筒倒壊のため大洗センター研究棟の使用が一年近くできなかったことで進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
UTe2の磁化測定と熱膨張測定はいくつか試料依存性も含めて、測定が終了したが、データの解析と考察を現在行っている段階であり、論文発表に向け実験データ解析と議論・考察をさらに進める。UNi2Al3においては、磁化困難軸方向の磁化の絶対値は非常に小さく、現在得られている最も純良な単結晶において絶対値を定量的に得るのは非常に難しかった。そのため、最近高感度化開発に成功したキャパシタンス式磁力計を用いて磁化困難軸における磁化の磁場依存性・温度依存性を詳細に測定する。 MBe13に関する量子振動測定(ドハース効果)の実験は、まだ予備実験しか行っていないが、ThBe13に加え、その他単結晶育成に成功したLaBe13, ScBe13, YBe13, CeBe13などについても角度依存性・温度依存性等の量子振動実験を進めたい。 また、微細加工に関しても、UBe13に関しては一部進めたが、まだ微細加工リングの完成に至っていないので、これらに関しても引き続き進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
純良試料育成の困難なウラン系超伝導UNi2Al3試料に関してはその育成が計画通り進まなかったため、別のアプローチとして測定感度を高性能にすることで解決の方向に向かっている。その際、既存の磁化測定セルより高感度な磁化セルを作るため、材料金属や金属パーツを設計・購入し、多くの磁化セルを試行錯誤しながら開発したため、元々計画していた測定機器の購入を次年度以降に持ち越した。そのため、次年度使用額が発生した。
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