研究実績の概要 |
本研究は、フラストレーションを有する新しい化合物群であるR6Pd13X4 (R = 希土類, X = Zn, Cd) と、R6Mg23Z (Z = 第14, 15族元素) について、非従来型の異常ホール効果 (AHE)を系統的に検証することを目的としている。これまでに多結晶試料を用いたホール抵抗率の測定を、Ce6Pd13Zn4, Nd6Pd13Zn4, Ce6Mg23Ge, Pr6Pd13Zn4, Sm6Pd13Zn4, Pr6Mg23Ge, Nd6Mg23Ge, Ce6Mg23Siの八化合物について行ってきたものの、AHEは観測されていない。その理由として、AHEに異方性がある可能性が否定できない。すなわち、ある特定の方向に電流や磁場を印可した時にのみ小さなAHEの寄与がホール抵抗率が出現する場合、多結晶試料を用いた測定では方向が平均化されてしまうことでその寄与が見えなくなってしまう可能性がある。そこで今年度は、これら八化合物の単結晶試料作製と、そのホール抵抗率測定を試みた。 R6Pd13X4とR6Mg23Zのいずれも、まずMoをるつぼとして用いたブリッジマン法による単結晶作製を試みた。粉末X線回折の結果からは目的とする化合物が得られたことが分かったものの、背面ラウエ法による結晶軸方位の同定を行ったところ、0.5mm角以上の単結晶としては成長していないことが分かった。この大きさではホール抵抗率の測定が不可能であるため、引き続いてR6Pd13Xについて、融点の低いX = Zn, Cdを溶媒とした自己フラックス法による単結晶作製を試みたが、RとXとの二元化合物など、目的化合物とは異なる化合物の単結晶しか得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
単結晶試料が得られる見込みが立たないため、R6Pd13X4とR6Mg23ZのAHEの検証をこれ以上行うことが不可能である。そこで、これまで並行して行ってきた新物質探索によって見出した幾何学的なフラストレーションを有する六方晶化合物RTX(T = Ag,In,Pd、X = Mg, Pb)のAHEの検証を、研究期間を一年間延長して行い、希土類化合物のAHEに関する知見を得ることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
R6Pd13X4とR6Mg23Zの単結晶試料が得られず、そのAHEを検証することが不可能であることに伴い、新物質探索によって見出した幾何学的なフラストレーションを有する六方晶化合物RTX(T = Ag,In,Pd、X = Mg, Pb)のAHEの検証を、研究期間を一年間延長して行うこととした。 RTXの多結晶試料の作製方法をこれまでに確立していることから、まず多結晶試料を用いたAHEの検証を行う。それと並行し、RTXの単結晶試料作製を試み、そのAHEの検証も行って行く。これらの試料作製で用いる原材料やるつぼ材の購入費、及びホール抵抗率測定装置をはじめとする各種測定装置を稼働するための低温寒剤の購入費が研究費の主な使途である。
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