研究課題/領域番号 |
20K03867
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
西嵜 照和 九州産業大学, 理工学部, 教授 (90261510)
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研究分担者 |
加藤 勝 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90204495)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超伝導 / 低温物性 / 物性実験 / ナノ構造 / 金属物性 |
研究実績の概要 |
本研究では,微細結晶粒を持つバルク金属の超伝導特性を明らかにすることを目的として,バルクナノメタル超伝導体の特性を磁化,電気抵抗,走査プローブ顕微鏡などの手法を用いて実験を行った.また,研究代表者による実験的研究と研究分担者による理論的研究を実施し,下記の成果が得られた. (1) 巨大ひずみ加工の1種である高圧ねじり(HPT)加工を用いてNb, Ta, V, NbTiなどの様々な超伝導体の作製を行った.2020年度はHPT-NbTiに着目して超伝導物性の実験を行った. (2) HPT-NbTiは通常の合金化手法(溶融法)ではなく巨大ひずみ法により合金化し,その合金化プロセスに対応する超伝導特性を上部臨界磁場Hc2を超える磁場領域まで測定した.磁化特性は振動試料型磁束計VSMを用いて15Tの磁場まで測定した.磁化特性から得られた磁束ピン止め力Fpの磁場依存性をHPT加工の度合い(回転数N)が異なるHPT-NbTiについて調べた.合金化過程のN=2の場合と合金化が完全に進んだN=100のHPT-NbTiを比較すると,N=2ではNbTiの体積分率が小さいためにFpは磁場とともに急激に減少するが,1T以下の低磁場領域では合金化が完全であるN=100のFpを超える値を示した.このことは,1T以下では強いピン止め効果が存在すことを示しており,合金化過程に生じるナノスケールのラメラ状のTi析出物によるピン止め効果と考えることができる.また,Nの増加とともにFpは増加し非飽和特性を示した.また,熱処理を行っていないHPT-NbTi(N=100)のFpがNbTi線の特性に迫る値を示し,微細結晶粒の粒界によるピン止め効果が有効であることを示す結果が得られた. (3) 結晶粒界における磁束状態とピン止め特性について理論計算を行い,バルクナノメタル超伝導体の磁場中超伝導特性の実験結果を解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料の作製と評価,磁化特性の測定など,研究計画調書に記入した予定通り進捗している.また,次年度に継続する走査プローブ顕微鏡測定の予備実験も順調に進んでいることから,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 現時点では研究計画通り順調に進展しているが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって研究機会が制限を受ける可能性があり,状況に応じて出張実験を見直すなど柔軟に対応する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 2020年度は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により国際会議の開催が延期になった.また,国内学会発表がオンライン開催になるなど,旅費の使用計画を変更したため次年度使用額が生じた. (使用計画) 2021年度は新しい走査プローブ顕微鏡実験を予定しているため,その試料ホルダなどの消耗品として使用する予定である.また,これまでの成果を積極的に発信するため学会発表用の予算として使用する予定である.
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