研究課題/領域番号 |
20K03875
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村島 隆浩 東北大学, 理学研究科, 助教 (50565520)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高分子 / 分子動力学法 / 連続体計算 / 非平衡 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
ミクロスケールの分子動力学シミュレーションとマクロスケールの連続体シミュレーションを接続するためには分子動力学シミュレーションの境界条件の問題を解決する必要がある。任意の変形は圧力制御の方法で有名なParinello-Rahmanの方法のように斜方セル変形を用いることで実現可能であるが、並列化効率の観点から多くのシミュレーションソフトウェアでは変形テンソルに全ての値を入れた任意変形は扱えない。また大変形を扱うとシミュレーションセルが潰れてしまう問題がある。シミュレーションセルが潰れてしまう問題は周期境界条件を利用した格子の切り替えを用いることで大変形を扱うことが近年可能になってきている(村島-萩田-川勝(2018))。また任意変形については村島-浦田-Li(2019)によってQR分解を用いた方法により可能になってきている。 今年度は、村島-浦田-Li(2019)で用いた方法を見直し、より汎用な問題に適用できるようにアルゴリズムの見直しを進め、シミュレーションコードの拡張を行った。 具体的にはマクロスケールの変形とミクロスケールのセル変形との間の座標変換を、分子動力学法内部で行えるようにシミュレーションコードを整備し、分子動力学シミュレータLAMMPSに実装した。これによって、従来の分子動力学法で取り扱いが困難な回転を伴う流れ中の非平衡分子動力学シミュレーションが可能になった。リスタート計算にも対応し、長時間の計算が可能になった。また実験室系と分子シミュレーション系の可視化にも対応し、流動中の分子の動きを調べることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
任意変形を分子動力学シミュレーションで実施するコードの作成について、最低限動くものはできたので、今後、マクロスケールの連続体シミュレーションに埋め込み、マルチスケールシミュレーションの実施を進めていく。 新たな課題として、超大変形を扱う場合の格子の切り替え(座標軸の取り換え)に問題(バグ)があり大変形の長時間計算に困難がある。この点については小変形のマルチスケールシミュレーションの問題を進めながら並行して解決の方法を探っていく。
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今後の研究の推進方策 |
今年度新しく開発した任意変形を可能にするコードを用いて、せん断回転流れ中の問題を考察し、論文化を目指す。 固体の変形などは現在の方法でも十分扱えるため、マルチスケールシミュレーションを実施し、論文化を目指す。 大変形の長時間計算に向けたシミュレーションコードの見直しを行う。UEF法(Murashima-Hagita-Kawakatsu(2018))などを参考にコードの開発を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により当初予定していた学会等の現地開催が中止となり、旅費の出費が減ったため。
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