研究課題/領域番号 |
20K03885
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
渡邉 宙志 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任講師 (20767199)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水素イオン / プロトン輸送 / 分子動力学 / QM/MM法 / 量子化学計算 / 量子コンピューティング |
研究実績の概要 |
これまでの研究で、QM/MM法において溶液中のプロトン移動のダイナミクスの取り扱いを可能にするフレームワークを構築した。これをもとにしたベンチマーク計算において、プロトンが時間的に間をおいて順々に水分子の間をジャンプしていくのは、比較的安定して取り扱うことができることが確認された。一方、一列に並んだ水分子間でほぼ同時にプロトン移動が起こるような状況(例えば水チャネルタンパク質中など)では、計算が不安定になることが判明した。これを防ぐ一つの方法としては量子的な取り扱いをするQM領域のサイズを拡張することあるいは高速化することであるが、現在の計算機において計算コストの問題から現実的ではない。そこで本年度はQM領域に適用する計算方法に量子コンピュータを用いる枠組みを検討した。 量子コンピュータ上で量子計算を実行するアルゴリズムは二つに大別されるが、今回は現在のノイズの大きいデバイス上で実行可能な変分量子固有値法を対象とした。ただしこの方法は、ハミルトニアンの期待値をコストと見立てて最適化を行うことで、対象系の基底状態を求める方法である。量子ビット数が大きくなると最適化が進行しないなどの欠点があることが知られており、この問題を回避するには適切な量子回路設計が重要となる。そのために我々は回路構造最適化法に着目した。これはコスト関数の最適化の最中に回路構造も同時に変化(最適化)させるものである。ただし従来の方法では、この最適化は単一量子ビットゲートに関して3つの回転軸をXYZの中から不連続に選択するものであった。我々は従来法を拡張/改善し連続的に単一量子ビットを連続的に、すなわち複数の自由度を同時にそして解析的に最適化する方法を提案した。これにより比較的に浅いに高い表現能力を持たせることが可能となり、効率的に最適化つまりハミルトニアンの基底状態を算出することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究者の所属機関の異動のために、研究を実施できない期間が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
従来のアダプティブQM/MM法の枠組みでは、ダイナミクスにおける連続性を重視されており、我々もそれに従ってきた。一方、昨今の量子コンピューティングでは量子状態の時間発展シミュレーションにおいてはランダムに演算子を作用させながら、量子状態のダイナミクスを高い精度で再現する流れが出てきている。この発想をアダプティブQM/MM法に還元すれば、境界のアーティファクトを低減し同時に、QM領域を拡大できる可能性が高いのではないかと考えており、理論解析とともに実装も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者の所属期間の異動により、研究が実施できない期間が生じ、研究の遂行が遅れてしまった。 次年度は、新たな計算機の購入などなど新たな研究環境の整備のために予算を使用する計画である。
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