研究課題/領域番号 |
20K03891
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
成行 泰裕 富山大学, 学術研究部教育学系, 准教授 (50510294)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 無衝突プラズマ / 磁気流体乱流 / エネルギー散逸 / 粗視化モデル / 非平衡関係式 / 太陽風 |
研究実績の概要 |
本年度は、太陽風プラズマで観測されるプラズマ速度と磁場が有限の相関(有限のクロスヘリシティー)を持った磁気流体乱流を記述する粗視化モデル(ランジュバン系)に対し、主に理論的側面から研究を行い、以下の成果が得られた: (1)ランジュバン系におけるアルヴェン状態(非平衡アルヴェン状態)に対する低周波極限(磁気流体極限)が、過減衰ランジュバン系における非平衡アルヴェン状態に対応することを示した。 (2)低周波・円偏波の近似下では、非平衡アルヴェン状態状態における粒子に対する非平衡仕事についての関係式が厳密に導出できることを示した。この関係式は、形式的には揺動散逸関係と同じ形であるが、式中の温度が熱浴の温度からずれる。 (3)非平衡アルヴェン状態において、過去に磁気流体モデルを用いて提唱されたクロスヘリシティーと残留エネルギー(擾乱中の磁場エネルギーと運動エネルギーの差)の線形関係式が成立することを示した。この関係式は、多次元的な波数スペクトルを持つアルヴェン状態においても成立する。 クロスヘリシティーと残留エネルギーの線形関係式が非平衡アルヴェン状態状態におけるエネルギー散逸と共通のパラメータを用いて得られたことによって、非一様な(グローバルな)太陽風中における乱流場の特性の変化を記述するモデルを得られる見通しが立った。以上の研究成果は査読付き論文誌に投稿し、掲載された。また、理論モデルの研究と並行して数値シミュレーションを実行し、理論式の検証や多次元アルヴェン波解の探索を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初、高クロスヘリシティーの乱流に着目して研究を進める予定であったが、粗視化モデルの理論的な解析から次年度以降の対象であった多次元波数スペクトル・残留エネルギーも含んだ成果が得られ、太陽風の非一様性も含めて見通しが得られた。そのため、理論モデルに関しては当初の計画以上に進展した状況であるといえる。
一方で、COVID-19の感染拡大による状況変化の影響を受けにくい理論研究を優先させた側面もあり、数値計算の推進は少し後回しになっている。ただし、理論式の検証等で基礎的な数値計算は既に実行しており、研究計画全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、数値シミュレーションを用いたパラメータ研究を行い、非平衡関係式/エネルギー散逸とクロスヘリシティー等の乱流場の特性との関係を精査する。また、モデルの理論的な解析も引き続き行い、より一般的な無衝突プラズマ中の磁気流体乱流の記述を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理論的な研究が予定以上に進展したことと、特に2020年度前半期はCOVID-19感染拡大の影響が大きく先の見通しが立て難かったことから、規模の大きな数値計算用のワークステーションの購入を次年度へ見送ったため。
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