研究課題/領域番号 |
20K03892
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前山 伸也 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (70634252)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プラズマ乱流 / マルチスケール物理 / 非線形相互作用 / 射影演算子法 / 一般化Langevin方程式 / 統計的データ解析 |
研究実績の概要 |
プラズマ中で生じる乱流は、大小様々なスケールの揺らぎを作り出す。近年のスーパーコンピュータを用いた大規模数値シミュレーションにより、広くスケールの離れた揺らぎの間にも、相互作用が存在することが明らかになった。本研究では、プラズマ物理・非平衡統計力学・データ科学のアプローチを利用して、プラズマ乱流マルチスケール相互作用を異なるスケール間の相関問題として捉え、コヒーレントな相関項と確率的な無相関項として表す一般化Langevin描像として定式化・体系化することを目指す。 令和2年度は、研究代表者らが理論の基本設計と原理実証を行った射影演算子法に基づく統計データ解析手法[S. Maeyama and T.-H. Watanabe, J. Phys. Soc. Jpn 89, 024401 (2020)]の適用性実証を進めるべく、磁化プラズマ乱流の例として、2次元長谷川-若谷ドリフト波乱流への適用を行った。乱流から帯状流に対する非線形相互作用項に射影演算子法を適用することで、帯状流に対して相関・無相関部分に分離し、相関部分が実効的散逸として働くことを示した。つまり、乱流が無相関項によってノイズ的に帯状流を励起する効果とともに、散逸的に減衰させる実効的渦粘性効果としてあらわされることを意味する。以上の結果は、乱流と帯状流が共存する準定常乱流において、両者の相互作用を一般化Langevin描像として捉える新しい見方を提供する成果である。 また、実施計画に記載していたジャイロ運動論モデルへの適用に関しては、スラブモデルの検証や新たに捕捉電子モードと電子温度勾配モードの相互作用を含む系への適用検討を進めた。 加えて、射影演算子法以外の非線形相互作用の直接評価手法の再考として、三波伝達相互作用の対称化と有向表現に関する共同研究も進め、査読付き論文誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長谷川・若谷ドリフト波乱流への適用については、計画通り進展している。
ジャイロ運動論的シミュレーションデータへの適用方法の検討についても、一定の進展が見られた。当初流体モーメント量に対して射影を取るなどの方法を検討していたが、捕捉電子モードと電子温度勾配モードの相互作用の場合、深く捕捉された粒子軌道の電子に着目すると、ポロイダル角・磁力線平衡方向速度・磁気モーメントがある特定の座標値のみに着目すればよいため、常微分方程式系への定式化である射影演算子法を適用できる見込みが得られた。
以上から、おおむね計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
長谷川・若谷ドリフト波乱流の研究に関しては、散逸が拡散的か、拡散的だとした場合にその拡散係数は乱流渦の波長・回転時間と関連するかという観点からさらに研究を進める。
ジャイロ運動論的シミュレーションデータへの適用に関しては、電子温度勾配モード乱流が捕捉電子モードを安定化することが分かってきた。そのため、相互作用項に射影演算子法を適用することで相関部分が散逸的に働いていることが確認できるのではないかという仮説が立てられる。この仮説を検証すべく、大規模データへの射影演算子法の解析コード開発とその適用を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張がオンライン会議に置き換わり、旅費の使用が進まなかったため。
繰越額は3月末日受理済み論文の出版経費(オープンアクセス)等に充てる。
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