研究課題/領域番号 |
20K03894
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡辺 正和 九州大学, 理学研究院, 准教授 (70446607)
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研究分担者 |
蔡 東生 筑波大学, システム情報系, 准教授 (70202075)
田中 高史 九州大学, 国際宇宙天気科学・教育センター, 博士研究員 (70346766)
藤田 茂 国立極地研究所, 研究教育系, 客員教授 (70500693)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁場トポロジー / 磁気流体シミュレーション / 地球磁気圏 / 磁気リコネクション |
研究実績の概要 |
REPPU(Reproduce Plasma Universe)コードを用いて、惑星間空間磁場斜め北向き(Bx成分なし、時計角-20°、大きさ6nT)の条件下で定常磁気圏を作り、その結果を解析した。定常的に交換型リコネクションが起きていることは、電離圏対流のパターンで判断できた。すなわち、電離圏高度のプラズマ対流は、Dungey型リコネクションによる対流とは逆向きで、かつ北半球では午前側の対流セルが、南半球では午後側の対流セルが閉磁力線の領域に形成されていた。この磁気圏の大域的磁場トポロジーを、筑波大で開発されたプログラムで調べた。 まず零点は、大域構造を決める2個の零点以外にも、複数(2個程度)存在することがわかった。これらの零点は固有値の絶対値が1桁小さく、Σ面(零点から広がる2次元の特異磁気面)は大域的に広がらない。これらは数値的で実体がない零点というわけではなく、一時的・局所的に現れた現実の零点というのが現在の解釈である。2個の主要零点からはΣ面が大きく広がる。しかし現時点では反対半球の零点に到達するまでΣ面を広げることには成功していない(途中で止まってしまう)。これはΣ面が必ずしも滑らかでないことが原因で、現在Σ面追跡のアルゴリズムを改良中である。 主要零点から広がるΣ面上で沿磁力線電場を可視化すると、交換型リコネクションの証拠がより直接的に現れた。これによりいわゆるX lineの位置をほぼ同定できた。またΣ面上でのプラズマ速度を調べると、X lineを挟んでΣ面を通過する向きが逆転することも確かめられた。X line近傍の磁力線の形状と合わせると、交換型リコネクションのトポロジーはPriest & Titov (1996) が提唱したfan reconnectionの亜種ではないかと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数値シミュレーションを行い、トポロジー解析を始めたという点では想定した進み具合である。しかしトポロジー解析で、十分な結果が得られていないという点では少し遅れているように感じる。特にΣ面追跡が(おそらく想定外のデータにプログラムが対応できず)途中で止まってしまい、磁気圏全体の大域構造が得られていないというのが現状である。また零点間の結びつきの様相(セパレータの同定)についても解析が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
磁場トポロジーの局所構造はかなりわかったので、大域構造の理解を進める。まず、大域構造を決める2個の主要零点から出るΣ面追跡を磁気圏全領域に広げる。現在は途中で追跡が止まっている。理由は、Σ面上にプログラムが想定していない構造(細い溝など)があり、それを乗り越えられないでいるからと思われる。筑波大学を中心に、前に進めないときは一旦後退するという手法が現在検討されている。この新アルゴリズムの導入を図る。また、大域構造を理解するためには、零点を結ぶセパレータを求めてトポロジーの「骨格」を可視化する必要がある。したがってセパレータを数値的に抽出する方法を確立したい。セパレータは磁力線でもあるので、原理的には零点から固有ベクトル方向に磁力線を追跡してやれば、別の零点に達するはずである。しかし実際には数値誤差があるので到達しない。Σ面追跡は磁力線追跡より強固な追跡なので、Σ面の交線としてセパレータを求める数値手法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者が次年度に繰越した直接経費は、次年度早々に可視化ソフトウェア購入に使用する予定である。コロナ禍により、分担者は旅費を使用しなかった。次年度に繰越し、物品費に使う予定である。
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