本研究の最終年度前年度応募により,新課題(23K03355:プラズマ中の同期現象の究明とカオス制御への応用)に採択されたため,本研究を再構築して発展させるために,当初の計画より1年間短縮する。本研究は,当初の予定を超えた速さで進展させることができた。 最終年度においては,時間遅れフィードバック法を電離波動系のカオスやリミットサイクルに適用し,カオス制御や新規の現象の発見という成果を得ることができた。さらに,高性能のハイスピードカメラを用いることによって,プラズマジェットの性質を調べ,2本のプラズマジェットの相互作用について研究し,相互作用によるプラズマジェットの動的挙動に関する成果を得ることができた。 研究期間全体を通じて実施した研究成果について記載する。本研究では,カオス理論に着目をしてプラズマを安定化する研究を進めた。カオス状態の電離波動に,外力やシンプルなフィードバックを印加することで振動が周期化すること,あらかじめフィードバックを印加されている系は,そうでない系と比べて,より小さな外力によって振動が周期化すること,そして,汎用的にカオスを制御するために,時間遅れフィードバック法(ピラガス法)を適用して,系が同期することによって振動が周期化すること等を明らかにした。 また,電離波動の研究で得られた知見を活用して,大気圧プラズマの安定化に取り組んだ。その結果,火花放電における光の変動を時空パターンとして測定し,火花放電が合体することによって,それぞれの火花放電の光の変動が安定化すること,続いて,ヘリウムプラズマジェットの発光をハイスピードカメラで観測し,2つのプラズマジェットが相互作用することによって,明滅のリズムが同期することを明らかにした。 これらの研究成果については,5本の査読付き英語論文,9件の学会発表等に結実している。
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