研究課題/領域番号 |
20K03896
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大石 鉄太郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80442523)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 不純物輸送 / タングステン / 極端紫外分光 / ITER / 多価イオン |
研究実績の概要 |
核融合プラズマの対向材として金属タングステンを用いる場合,プラズマ中にタングステン不純物イオンが蓄積することによる放射損失が問題となる.本研究では,ITERのプラズマ中心部など極めて電子温度の高いプラズマ中に分布すると考えられる高電離タングステンイオンの空間分布計測手法を確立する.実験は核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDで行った.炭素樹脂内に微量のタングステン金属片を封入したペレット(タングステン原子10^17~10^19個に相当)を,中性粒子ビーム加熱により維持された高温(1~4 keV)・高密度(10^13~10^14 cm^-3)の水素プラズマに導入し,ペレット入射後に電子サイクロトロン共鳴加熱を重畳し高い電子温度を維持することにより,高電離タングステンイオンの十分な発光量を得た.今年度はLHDプラズマ中でのタングステンイオンの輸送特性の評価を目的として,タングステンイオンが閉じ込め領域に長時間滞在する蓄積現象の観測を行った.蓄積現象の有無は電子密度に依存し,タングステン入射後の電子密度が2×10^13 cm^-3を超える高密度領域において発現する.中心電子温度を3keV程度に調節し,5価,24価~28価,37価,38価,41価~46価タングステンイオンからの発光線スペクトル強度の経時変化を同時に観測したところ,2秒間程度の放電時間に亘って線スペクトルの放射が続き,放電中の電子温度変化に対応して価数分布が変化していることがわかった.一方電子密度が低い場合には,全ての価数において発光線スペクトルが速やかに減衰しており,タングステンが蓄積されずに排出されたことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温プラズマへのタングステン不純物導入,可視・真空紫外・極端紫外の広波長領域分光によるタングステンイオン発光の計測,低価数から高価数までのタングステン線スペクトルデータの取得,タングステンイオンの輸送特性の変化を示唆する現象の観測など,研究の各段階において当初期待していたとおり成果が出ているため,おおむね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
プラズマの赤道面に対して垂直方向に空間分解能を持つ分光器を用いて、タングステンイオンの発光強度分布を空間分解計測する.プラズマへの粒子供給や加熱を制御して電子密度及び電子温度の空間分布を変化させ,これらの分布とタングステン不純物輸送の関係を探索する.特にタングステン不純物蓄積を抑制する運転シナリオ構築の観点からデータを整理する.また,分光計測の波長領域をより短波長のX線領域まで拡大し,高価数タングステンイオンの発光線スペクトルデータの拡充を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初の予定よりも現有設備を有効活用できたため物品費支出が少なかったこと,及び海外渡航して参加予定だった国際学会がオンライン開催に変更されたため旅費支出が少なかったことにより,次年度使用額が生じた. (使用計画)次年度には,今年度までに同定されたスペクトルをより明るく観測するために光学系を最適化し,検出効率の向上を図る.極端紫外光用回折格子や較正用スペクトルランプなどの光学機器購入費,複数種の炭素樹脂を母材としたペレットの製作費,ガスケット他真空部品とケーブル,コネクタ他電子部品の購入費を物品費として計画している.研究成果は国際学会及び国内学会で発表し,論文化する.
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