研究課題/領域番号 |
20K03899
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
嶋田 雄介 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20756572)
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研究分担者 |
吉田 健太 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10581118)
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00322529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核融合炉材料 / 電子顕微鏡 / マルチスケール組織 |
研究実績の概要 |
2020年度は、アルミナ分散型の酸化物分散強化銅合金(ODS-Cu)とタングステン(W)をホットプレスにより接合を行い、断面の組織観察を行った。その結果、得られた成果および知見を下記に示す。 1.ホットプレスに際しては、ODS-Cuを20ミリ角に切断後、平行かつ平面研磨による鏡面仕上げを行い、金属ろう材であるBNi-6を塗布したうえで、900℃で純W板との圧着加熱を行った。加熱温度は先行研究論文の情報を基に決定した。このとき塗布量を変化させて接合材を作製したが、断面を光学顕微鏡により確認したところ、いずれも十分に接合されていたため、今後の実験においては塗布量が最も少ない試料を用いることとした。 2.FIB-SEMによる断面観察により、接合面からODS-Cu内部までの組織比較を行った。接合面においてはCuでもWでもない相が形成していたが、これはろう材に起因するものであることが考えられる。また、Cu粒径に注目すると、接合面から数10マイクロメートルの範囲で粗大化しており、またひずみに伴うコントラストも小さいくなっていることから、この領域が熱影響部であることが示唆された。ほかにも特徴として、熱影響部には粒界にナノメートルスケールのボイドがいくつか形成しており、現状において申請段階で予想した組織が概ね得られている。 また、作製した試料の一部は中性子照射のため、大洗センター共同利用システムによってベルギーにあるBR2炉に送るなど、次年度以降の準備も順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は申請書におけるフェイズ1である接合試料の作製と観察法の確立を行う予定としていた。結果として必要な材料をそろえ、ホットプレスによる接合とさらに界面組織観察まで成功しており、おおむね順調に進展しているといえる。また次年度以降の準備も進められていることからも進捗に問題はないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、初期組織のその場加熱観察による変化およびウィークビーム法などにより欠陥構造を捉えることを最初に行う。また組成分析によってろう材に含まれるNi原子がCu中にどこまで拡散しているかを調査する。さらに同年度では分担者の菱沼准教授のもとイオン照射試料を作製し、これまで確立した組織観察法により初期組織との比較観察を試みる。 2022年度は、2020年度に送付した中性子照射試料が届き次第、こちらの観察を行う。最終的にはこれらの観察結果から、照射下におけるダイバータ模擬材の組織変化の解明に取り組む予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最も大きな理由がコロナウイルスによる学会のオンライン化である。予定していた国際会議(SOFT2020)や2件の国内会議(金属学会など)がオンライン化し、また、出張による実験が制限されたことで予定の旅費と大きな差が生じた。他にも共同利用装置の停止などもあったことが原因と挙げられる。 次年度は利用価格は高くなるが、遠隔での共同利用支援などを利用することで、実験が円滑に進められるよう取り組む予定としている。
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