研究課題/領域番号 |
20K03903
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今寺 賢志 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (90607839)
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研究分担者 |
岸本 泰明 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (10344441)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / 乱流輸送 / ジャイロ運動論シミュレーション / 内部輸送障壁 / 燃料粒子補給 / 輸送モデリング / ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
令和2年度の主な成果は以下の3点である。 (1) 運動量等分配作用素を考慮した多粒子間衝突オペレータの開発,および実装:燃料粒子補給や内部輸送障壁形成の制御を行うために,多粒子種間衝突を考慮した衝突オペレータを開発し,我々が開発したグローバルジャイロ運動論コードGKNETに実装した。特に,平衡成分を介した従来のエネルギー等分配作用素に加え,運動量等分配作用素を新たに導出した。これにより特に,外部トルクや自発回転が本質的な役割を果たす内部輸送障壁の自発形成過程のより詳細な解析が可能となった。 (2) 解析磁場平衡を実装したGKNETを用いた磁気面形状効果の解析:Grad-Shafranov方程式をアスペクト比の1次のオーダーで近似して解析的に解くことによって得られた磁気面座標系をGKNETに導入し,楕円度,三角度が微視的不安定性に与える影響について評価した。その結果,楕円度の増大によって微視的不安定性が安定化されること,三角度の正負によって安定化効果が異なることを明らかにした。 (3) グローバルな粒子/運動量/熱輸送モデリングの開発:グローバルな粒子/運動量/熱輸送係数のモデリングの開発を目的として,大域的な各点の温度勾配を説明変数,ある点での熱流束を目的変数としたニューラルネットワークを構築し,その予測精度に対する各説明変数の寄与度を計算することで,カーネル形式の熱輸送係数モデルを見積もることに成功した。この成果は,粒子/運動量/熱輸送のモデリング,特にヒステリシス性を有する非局所的な輸送応答のモデリングを行う上で大域性を考慮することが重要であることを示唆しており,統合輸送コードに実装する粒子/運動量/熱輸送モデルの高精度化に資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,磁気面形状と選択的加熱を最適化することによって,(A)燃料粒子補給とヘリウム灰排気の両立のための粒子/熱輸送制御,(B)先進プラズマ運転モードにおける内部輸送障壁形成のための運動量/熱輸送制御を行うと共に,(C)グローバルな粒子/運動量/熱輸送係数のモデリングの高度化を研究テーマとして設定している。令和2年度は(A), (B)の研究の遂行にあたって必要不可欠な多粒子間衝突オペレータと解析磁場平衡の導入が完了したことから,研究は概ね順調に進展している。また(C)についても,ニューラルネットワークに基づいた仮想的な熱輸送係数モデルを構築し,ヒステリシス性が顕著にみられる現象における熱輸送カーネルの同定に成功していることから,計画は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように研究は概ね順調に進展しているが,(A)と(B)の課題を遂行する上で,計算コストが高いことが問題点として挙げられる。この点を解決するために,今後はfield aligned coordinateと呼ばれる座標系を導入し,計算コストの削減を図る。現時点において方程式系の導出は完了していることから,今後はそのコードの開発を行う。 一方,(C)については,熱輸送係数モデルの構築だけでなく,支配する偏微分方程式自体を推定する試みを行うことで,より現象に沿ったモデルの同定を行う。その推進にあたっては専門家との共同研究を積極的に行う予定である。
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