研究課題/領域番号 |
20K03907
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
沼波 政倫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40397203)
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研究分担者 |
松岡 清吉 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (10609986)
仲田 資季 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (40709440)
佐竹 真介 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (70390630)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プラズマ乱流輸送 / ジャイロ運動論 / 第一原理シミュレーション / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本課題は、磁場閉じ込め核融合プラズマの閉じ込め性能に重要な影響を及ぼすプラズマ輸送現象に対して、大規模なシミュレーションや数理モデル、データ解析手法を効果的に用いることで、高い閉じ込め性能を実現する温度・密度分布を見出すことが主目的である。プラズマ乱流の第一原理であるジャイロ運動論に基づいた多くの数値研究によって、輸送係数や乱流スペクトルなど、重要な物理量や物理特性が定量的に再現できるようになってきており、シミュレーション研究が各国て精力的に行われている。しかし、例えば、複数粒子種から構成されている現実的なプラズマにおいては、粒子種ごとに異なる輸送特性を有するために、それぞれに異なる温度密度分布が形成される。その形成過程は複雑であり、未解明な部分が多い重要な課題の一つである。特に、こうした系を第一原理計算で扱おうとした場合、極めて巨大な計算量が必要になるため、従来と同様の方法で輸送予測することは困難である。このような背景の下、本研究は、第一原理計算と簡約された数理輸送モデル、データ科学手法を利用しながら、効率的なプラズマ輸送予測を行い、多成分プラズマの分布形成の物理を解明することを目指している。令和4年度では、前年度に行った本研究の重要部分である数理モデル関係式の拡張(乱流の時間発展までを含めた拡張)に基づき、その関係式の構成要素である乱流振幅成分と帯状流成分、輸送係数の各々における時間発展の時間遅れの効果を明示的に導入した更なる拡張を行った。この拡張により、これまでの関係式よりも更に乱流輸送を精度良く再現することが可能になった。加えて、ジャイロ運動論シミュレーションで得られる5次元位相空間の分布関数を画像化することにより、これまで把握できていなかった5次元分布関数の時間発展の様子を直接的に捉えることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年目である令和4年度では、前年度から実施していた本課題の主要課題である簡約乱流輸送モデルの更なる高精度化を目指した拡張に取り組んだ。この拡張は、簡約モデルの基礎となる乱流振幅、帯状流成分、輸送係数で表現された数理関係式を、時間発展を含めた時系列データに対しても適用し再構成するものである。前年度では、シミュレーションから得られた時系列データをそのまま扱っていたが、乱流や帯状流が時間遅れを伴って発展することに着目して、この時間遅れの効果を導入した。その結果、関係式の精度が向上することが分かった。さらに、乱流シミュレーションの新しいデータ解析方法として、5次元位相空間上の分布関数を画像化する手法を構築し、画像としてデータ解析を行うことで、直感的にも機械的にも高次元分布関数の時間発展を評価しやすくなる手法構築を行った。以上のように、本課題の主要課題である簡約輸送モデルに対する高精度化の新しい指針と物理機構の解明に向けた解析手法の構築という重要な成果を得ることができた。しかし、本課題の目的の一つである密度分布の形成に関する解析が若干遅れており、上記の達成度とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度において、本課題の最重要部である簡約輸送モデルに対して、その基礎となる数理関係式を拡張し、ジャイロ運動論シミュレーションの計算結果をさらに高い精度で再現できるようになった。さらには、5次元分布関数の画像化に基づくデータ解析方法も構築した。これらを受けて今後は、これまでと同様の方針で簡約輸送モデルへの落とし込みを行うだけでなく、簡約モデルの基礎となっている数理関係式から導かれるプラズマ輸送における物理解釈にも踏み込み、粒子輸送を含めた磁場閉じ込めプラズマの輸送や分布形成における物理の一般性を伴う議論に発展させていく。特に、2年目と3年目に実施した研究において、数理関係式を構成するパラメータが張る空間上での特徴的なパラメータ構造が形成されることが新たに分かっている。このパラメータ空間構造の形成を起点として、プラズマ輸送の物理における普遍的な特性の解明にも目を向け、本課題の主目的である複数粒子種プラズマの温度・密度分布形成の物理機構の解明を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 年度前半において、国際会議への申し込み時期が新型コロナウイルスの国内外の感染状況が不透明な時期に重なり、参加を見合わせる会議が発生した上、自身と家族が時間を置いてコロナ感染したため、長期間、外出不可の状況が続き、その参加旅費として予定していた使用計画が修正され、次年度以降への使用計画の変更を行なうこととなった。 (使用計画) 令和5年度では、新型コロナウイルスの感染状況が改善し、特に海外開催される国際会議への参加が容易になっている。殆どの会議が現地開催で予定されている状況であるため、海外出張への障壁は少なくなっている。本課題のこれまでの3年間で使用が難しかった国際共同研究旅費や国際会議への参加旅費も問題ないものと予想されるため、旅費に多く配分した使用計画を立てている。同時に、令和5年度前期では、これまでに実施した大規模シミュレーションで得られたデータの保存ストレージ等を使用費目として計画している。
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