研究実績の概要 |
2020年度は、非共鳴モードへの遷移に着目した。LHD実験では、回転変換が上昇する方向に正味トロイダル電流を流した場合、崩壊現象が観測されている。さらに、この崩壊現象は、常に(m,n)=(1,1)のモード数を持つ摂動によって引き起こされることが確認されている。ここで、m、nはそれぞれ、ポロイダルモード数、トロイダルモード数である。そこで、このような電流が流れた場合について、3次元電磁流体力学的(MHD)数値シミュレーションを行った。特に、正味トロイダル電流によって、コア領域での回転変換の分布が極めて平坦となり、かつ、その値が1に近い場合について注目した。摂動の時間発展を追跡すると、線形領域では、(m,n)=(3,3)のモード数を持つモードが支配的であり、この状況は、実験結果とは一致していない。このモードは、共鳴面近傍で局在しており、従来から知られている交換型モードに対応している。しかし、非線形領域に入ると、この支配的なモードが(m,n)=(1,1)のモード数を持つモードに変化する。さらに、この遷移したモードは、共鳴面から離れたコア領域に局在している。したがって、このような回転変換分布を持つ場合には高いモード数を持つ交換型モードから低いモード数を持つ非共鳴のモードへ遷移する、ということが新しく得られた。この結果から、この遷移現象は実験結果を説明する一つの候補であると考えられる。ただし、この遷移現象の詳細は、シミュレーションで初期条件として使用している微小初期乱数の選択によって異なる。線形領域での第1及び第2支配モードの差が小さくなるような初期乱数に対しては、最終的に(1,1)モードへ遷移するが、両者が少し離れるような初期乱数に対しては、(2,2)モードへ遷移する。実験では、常に(1,1)モードによって崩壊しており、これを説明するための条件を今後検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、(m,n)=(1,1)の非共鳴モードを再現する条件を精査する。そのために、今回この遷移が得られたMHD平衡の周辺のパラメタ領域において数値シミュレーションを拡充する。その後、この計算で得られた知見に基づいて、さらに実験との対応を検討する。実験では、崩壊現象が生じる場合、その放電初期におけるプラズマ回転が、崩壊直前に停止するということが観測されている。また、磁気島印加実験では、外部から印加した磁気島の幅が大きいほど、回転が停止しやすいことも計測されている。このことから、プラズマの回転や磁気島の存在が崩壊現象に影響を与えていると考えられる。そこで、この状況を解明するために、まず、プラズマ回転の効果を含めた数値シミュレーションを行う。また、これと個別に、磁気島が存在する平衡状態に対して数値シミュレーションを行う。そして、そのそれぞれの効果が非共鳴モードへの遷移に対する影響を解析する。さらに、この回転と磁気島の効果を同時に導入し、実験結果を再現することを目指し、崩壊現象のメカニズムの解明を行う。
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