研究実績の概要 |
2021年度においても、引き続き、正味電流を流した場合の大型ヘリカル装置(LHD)プラズマにおける圧力駆動型モードの非線形遷移の研究を行った。正味電流によって回転変換分布がコア領域で平坦となってその値が1に近づくと、共鳴面に局在する交換型モードから、磁気シアが弱い領域に局在する非共鳴モードへの非線形遷移が生じることを昨年度見出した。今回、この遷移についてのダイナミクスをさらに精査した。昨年度の解析では、微小初期乱数の選択によって、遷移した先のモード数が異なることを報告したが、さらに時間発展を追跡することにより、どちらの場合においても、支配的なモード成分が最低次の(m,n)=(1,1)成分となることが得られた。またこの遷移においては、線形成長率の関係から、この(1,1)モードが、新たな線形モードの出現によるものではなく、初期に線形不安定であった(3,3)モードと(2,2)モードの非線形カップリングによって生成されたものであることも判明した。また、この非線形遷移におけるモード数の変化が、インバースカスケードと同様に連続的に変化していくことも得られている。一方、実験では、電磁流体力学的不安定性による崩壊現象は、必ず(1,1)モードによって引き起こされることが報告されている。本解析で得られた遷移後のモード数はこのモード数と一致しているため、この非線形遷移が、実験での崩壊現象を引き起こすメカニズムの一つの候補であると考えられる。さらに、海外共同研究者との議論において、トカマク配位での非線形シミュレーションにおいても、同様の回転変換分布を持つ場合には非共鳴の準交換型モードが見出されることがわかった。両者の比較を行った結果、モード数の低い成分へ遷移していること、またその遷移のためには、平坦な回転変換分布が必要であることにおいて、配位の違いを超えて共通していることが判明した。
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