研究課題/領域番号 |
20K03910
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
渡辺 清政 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (00249963)
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研究分担者 |
關 良輔 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80581066)
武村 勇輝 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60705606)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MHD平衡 / 非等方圧力 / MHD不安定性 / ビーム圧力 / 磁気計測 / FIDA(高速イオン由来Dアルファ線分光計測) |
研究実績の概要 |
圧力非等方度がMHD不安定性に与える影響を調べるため、大型ヘリカル装置(LHD、核融合研)のプラズマに対して、ベータ値やその分布、圧力非等方度を変えた場合の非等方圧力時のMHD平衡と安定性を非等方3次元MHD平衡解析コードANIMEC、3次元非等方理想MHD不安定性解析コードTerpsichoreを使って評価した。その際、LHDの高ベータ放電で重要な周辺領域で発現する交換型不安定性に着目した。その結果、等方圧力の場合に対して、磁場平行方向の圧力が垂直方向のそれより大きい時交換型不安定性はより安定化されることが判明し、磁場平行方向の圧力が高いと予測されるLHDの高ベータ放電で、ビーム成分による非等方圧力がMHD不安定性の安定化に寄与している可能性が示された。 上記を受けて、LHDで達成した体積平均ベータ値が約5%の中性粒子ビーム入射(NBI、プラズマ加熱用)に起因した非等方圧力とその分布を軌道追跡と速度分布関数評価コード(MORH)を使って評価し、これらの圧力情報を使ってMHD平衡配位(磁場データ)を再構築しようとしたが、収束解が得られなかった。軌道計算による非等方圧力の見積もり(磁力線平行方向の圧力と磁力線垂直方向のそれの比は約3:1)は、反磁性計測と熱化電子圧力分布の計測、実効電荷の仮定(2.5)によると、磁力線に平行方向の圧力の割合が大きすぎると推定され、現在、磁気計測器や分光計測を用いた圧力非等方度の推定方法について考察を進めている。 平行して、高速イオン軌道に対する径電場の効果を調べた結果、プラズマ中心で、高速イオンのエネルギーに相当する電位(150keVのイオンに対しては150V)程度の径電場が粒子軌道に影響を与えることがわかった。NBIに起因した高速イオンの軌道面と磁気面のズレにより発生する径電場の評価は次の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
軌道追跡コードで評価した非等方圧力分布の入力で非等方(LHD高ベータ放電)時のMHD平衡配位の収束解が得られなかったので、その入力で安定特性の予測を行い、実験結果と比較後、その知見を基に圧力非等方度による不安定性の違いを評価するための実験シナリオを検討する計画の軌道修正が必要になった。一方、圧力非等方度による安定性への影響の理論的な予測計算の結果、磁場平行方向に優位な圧力非等方度は交換型不安定性に対して安定的な寄与、その逆の場合は不安定化の寄与を与えることを解明。研究目標に対する総合的な進展度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(i) 磁気計測器を用いた圧力非等方度の推定精度の向上と高速イオンに起因する分光計測に基づく圧力非等方度指標の評価手法の探求。渡辺と關が協力して担当。 (ii) (i)に基づくLHD高ベータ放電時の非等方MHD平衡の再構築とTerpsichoreによる安定性予測と実験結果の比較。渡辺と武村が協力して担当。 (iii) NBIに起因した高速イオンの軌道面と磁気面のズレにより発生する径電場の評価とLHD高ベータ放電時の圧力非等方度への影響の評価。主な担当者は關。 (iv) ANIMEC, Terpsichoreを使った圧力非等方度MHD不安定性の影響の差が定量的に大きく出る実験条件の洗出しとMORHコードを使った圧力非等方度実験実現シナリオの策定。実験シナリオの作成、実施はは渡辺と關が協力し、不安定性の計測、解析は武村が担当する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金で有効に支出する品目が無かった。残金は翌年度分と合算し、有効に利用する予定である。
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