研究課題/領域番号 |
20K03916
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
奥谷 昌之 静岡大学, 工学部, 准教授 (00293605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非平衡平面プラズマ / 色素増感太陽電池 / 液中プラズマ / 誘電体バリア放電 / 酸化チタン / 酸化スズ |
研究実績の概要 |
本研究では、大気圧非平衡平面プラズマを利用して独自に開発した製膜技術を液中製膜法へ発展させる。具体的には、平板状の放電用電極と製膜用基板の間に前駆体溶液を毛細管現象で注入後、電極に高バイアスを印加して局所的に微小空洞を形成し、この空洞に閉じ込めた平面プラズマを前駆体へ照射する新規製膜技術である。さらに、プラズマの発生方式に関し、従来の製膜法で採用した誘電体板表裏へのバイアス印加に対し、本研究では市販のレジストを利用した微細な金属グリッド上に誘電体板を設置し、その面内にバイアスを印加する新方式を採用する。これにより、液中におけるプラズマ発生領域の空間的安定性、およびナノレベルでの微細制御が確保される。このように、本研究では液相を利用した製膜でありながら、従来法とは全く異なり、基板上へ塗布された前駆体液膜へプラズマを照射して前駆体を高速分解するだけでなく、2次元プラズマの局所的な照射による低融点基板上へのパターニング製膜、およびその電子デバイスへの応用を目的としている。 本研究により液中におけるプラズマ発生領域の空間的安定性、およびナノレベルでの微細制御が確保される。さらに、この手法をダイレクトパターニング製膜へ展開するとともに、新エネルギー源として期待されている色素増感太陽電池の集積化(モジュール化)に対する実用的技術へと進展させる。このため、本研究がもたらす技術革新は、単なる製膜技術にとどまらず、エネルギー・環境問題の社会的ニーズに応えることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液中に発生させるプラズマの安定性を確保するため、誘電体板の表裏にバイアスを印加する従来型に対し、レジストの金属グリッド上に誘電体板を設置し、その面内にバイアスを印加する方式を新規に採用した。さらに、高精密なダイレクトパターニングを実現するために、金属グリッドのデザインの微細化だけでなく、磁場印加によるプラズマの3次元的な制御も液中製膜に有効であると考える。そこで、電極ホルダーを永久磁石がセットできる形式に改造し、各雰囲気ガス下で発生するプラズマに磁場を印加してローレンツ力を誘引し、プラズマの軌道制御を行った。 本年度は酸化チタン微粒子(P25)とペルオキソチタン錯体の混合前駆体溶液に酸化スズコーティング基板をセット後、同様なプラズマ照射により多孔質酸化チタン層を積層後、色素増感太陽電池セルを作製する。セルの電池特性の評価はJIS規格に従うものとし、AM-1.5、100 mW/cm2の擬似太陽光下で3.6%の変換効率を得た。 ここまでの成果は、学会発表だけでなく、学術論文に投稿・出版されている。
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今後の研究の推進方策 |
高精密なダイレクトパターニングを実現するために、金属グリッドのデザインの微細化だけでなく、磁場印加によるプラズマの3次元的な制御も液中製膜に有効であると考える。そこで、電極ホルダーを永久磁石がセットできる形式に改造し、各雰囲気ガス下で発生するプラズマに磁場を印加してローレンツ力を誘引し、プラズマの軌道制御を行う。 さらに、基本的なプラズマ制御条件をもとに、パルス波の発生器をレンタルで新規導入し、プラズマの高エネルギー化、および電極上における空間分布の微細制御を試みる。この際、ラングミュアプローブによりプラズマの空間分布状態を逐次観察する。得られた知見をもとに、ダイレクトパターニング製膜の精度を高める。 あわせて、新規にステッピングモータをゴニオメータ上の基板に組み込んで10~5 mmのライン状にダイレクトパターニング製膜を実施し、2×2型モジュールを作成する。この際、直列セルと並列セルの要素をそれぞれを組み込み、モジュール技術を評価する。このモジュールでは、パターニング製膜の精度が重要であることから、モジュールの評価データをさらにフィードバックしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の前期期間は新型コロナウィルスの蔓延にともない、大学での研究活動に制限が生じたため、実質的に6か月程度しか研究を遂行することができなかった。繰り越し分は次年度の消耗品費として使用する予定である。
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