我々は熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理により,アナターゼ結晶ベース型酸化チタンナノ粒子の光触媒活性が365 nm LEDと405nm LED照射下で優位に向上することを明らかにしてきた.しかしながら,バンドギャップエネルギーが小さいルチル結晶ベース型酸化チタンナノ粒子にも優位に処理効果があるのかわかっていない. 本年度,白色ドープしたルチル結晶型酸化チタンナノ粒子においても,熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理効果により,白色LED照射下でも光分解力が優位的に向上することを見出した.電気炉アニーリング処理法,大気圧酸素プラズマ処理法,酸素ガスアニーリング処理法よりも高い光分解力を示した.しかもルチル結晶ベース型酸化チタンナノ粒子表面の親水性の向上にも寄与した.光励起電気導電率のデータ分析から,熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理により増加した光励起キャリア濃度が主要因であることがわかった.電気炉アニーリング処理法は酸化チタンナノ粒子の結晶性に依存することを考えると,本処理方法の優位性は高い. 更に,熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理したアナターゼ結晶型酸化チタンナノ粒子の非接触殺菌力(光触媒から離れた地点での殺菌力)も科学的に明らかにした.電気炉アニーリングしたものに比べ約10倍もの高い非接触殺菌力を示した.この非接触殺菌力の主要因は,光触媒表面で生成された長寿命の過酸化水素が,微生物が存在する場所まで気流に乗って飛行し到達したことによる酸化力であることも明らかにした.これは酸化チタンナノ粒子の新しい応用を期待させる知見である. これらの知見は,酸化チタンナノ粒子の光触媒活性化機構の理解と応用において学術的に極めて重要である.熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理法は,酸化チタンナノ粒子の光触媒活性増強化および非接触殺菌性に新たな展望をもたらす画期的なポスト処理法であるといえる.
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