研究課題/領域番号 |
20K03921
|
研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大島 多美子 佐世保工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (00370049)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 粉体ターゲット / スパッタリング / 透明導電薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究は、スパッタリング法において材料粉末をそのままターゲットとして利用することにより、安価で容易な薄膜の作製を目的として研究を行っている。しかし、再現性良く安定した成膜には至っていない。また、固体では実現できない粉体特有の効果を見出すことも重要である。 2020年度は、①ZnOとAl2O3の粉体を用いて混合比の異なる混合粉体を作製し、スパッタリング法によりAlドープZnO(AZO)透明導電薄膜の作製を行った。作製したAZO薄膜は、膜厚(堆積速度)、結晶性、化学結合状態、電気特性、光学特性等を測定し、混合粉体の混合比と膜特性の関係について調査した。また、②①において最も優れた膜特性を有するAZO薄膜の作製に使用した混合粉体を用いて、堆積時間や粉体の交換頻度を変化させて①と同様の実験を行い、粉体ターゲットの経時変化と膜特性の関係について調査した。 その結果、①ZnO:Al2O3=90:10 wt%の混合粉体を用いて室温で作製したAZO薄膜において、可視光平均透過率86.3%、抵抗率6.7×10^-2 Ω・cmの膜特性が得られた。XRD測定ではZnO由来の回折ピークが観測され、XPS測定ではZn2pおよびO1sのピークに加えAl2pピークが観測され膜中へのAl含有が確認された。また、②粉体ターゲットを交換せずに堆積時間を変化させて作製したAZO薄膜の膜厚および堆積速度は、堆積時間の増加に伴い膜厚は増加していたが堆積速度は減少していることがわかった。その他の膜特性においても、堆積時間の増加に伴い劣化傾向へ変化した。1回の成膜毎に粉体ターゲットを交換した場合、連続使用に比べて膜特性の劣化は軽減されたが、堆積時間は30 minが最適であることを明らかとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、①混合比の異なる混合粉体を用いてスパッタリング法によりAZO透明導電薄膜の作製および評価、②粉体ターゲットの経時変化と膜特性の関係調査を実施した。その結果、①AZO透明導電薄膜を作製するために用いる混合粉体の最適な混合比を明らかとし、②粉体ターゲットの耐久性についての知見も得られた。これらは新材料開発を行ううえで、粉体ターゲットの特性や取扱いに関する重要な示唆を与えるものである。 同一条件での複数回成膜実験など再現性の確認を取るために時間を要したり、装置の不具合対応に時間を要したりもしたが、おおむね予定通りに実験は進んでいる。論文として公表できるデータが得られており、今後、考察に必要な追加実験を行い、論文の準備に取り組んでいきたい。以上より、おおむね順調であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、粉体ターゲットの材料や粒径サイズによる特徴を詳細に調べ、粉体特有の効果を見出す。そのために、①異なる材料や粒径サイズの粉体を用いたプラズマ計測、②①の粉体を用いた成膜および膜特性の評価、③粉体の種類や粒径サイズとプラズマや膜特性との関係調査を実施する。これにより、固体ターゲットにはない粉体特有の効果を見出すと共に、スパッタリング法において粉体ターゲットによる薄膜堆積過程の解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、成果発表のための旅費がかからなかったことや、粉体や基板材料などの消耗品を一部、既存のもので賄うことができた。そのため、次年度使用額が生じることとなった。2021年度は、粉体特有の効果を見出すために、様々な種類の材料粉末や異なる粒径サイズの粉末などを購入する予定であるが、翌年度分として請求した助成金と合わせて、材料粉末や粒径サイズの種類を増やし、より多くの種類の粉体ターゲットを用いた実験を行う計画である。
|